“オワコン扱い”だったのになぜ? 三菱重工の決算が「絶好調」な理由:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(1/2 ページ)
MRJの撤退を正式に発表したことで、三菱重工の株価は一時的に下落。ちまたでも「オワコンだ」などと厳しいレッテルを貼られていたが、蓋を開ければ決算は絶好調そのものだった。どういうことなのか?
三菱重工の業績が絶好調だ。同社は2023年3月に国産旅客機プロジェクトであるMRJ(三菱リージョナルジェット)の撤退を正式に発表したことで一時的に株価は下落、ちまたでも「オワコンだ」などと厳しいレッテルを貼られていた。
しかし、蓋を開ければMRJから撤退したはずの23年3月期決算は絶好調そのもので、新たに世界シェアトップの座についた製品の出現など、転機を迎えている様子だ。24年3月期には10年ぶりに過去最高益を更新する見通しであり、ちまたの評価と業績に一定の乖離(かいり)が生じているといえる。
今回は、三菱重工業のMRJで味わった挫折と、そこからの復活にどのようなストーリーがあったのか探っていこう。
ガスタービン事業が世界シェアトップに
特筆すべきは、ガスタービンの世界シェアがついにトップとなったことだろう。
近年、同社はグローバルなエネルギーシフトや脱炭素社会への舵切りに向けて、水素ガスを利用した大型のガスタービンをはじめとした、環境負荷の低い高効率なタービン事業が躍進している。高効率なガスタービンは、化石燃料から再生可能エネルギーへの移行期における中間エネルギー源として注目を集めているのだ。
同社の決算内容をみても、ガスタービン・コンバインドサイクル(GTCC)事業が特に業績を伸ばしている。同事業の売上収益は前年同期比19%増の7368億円を達成。三菱重工の全社における売上収益は4.2兆円であったことから、全社売上のうちおよそ2割がガスタービンによるものとなっているといえるだろう。
ガスタービンの世界シェア争いは、ドイツのシーメンスやアメリカのゼネラル・エレクトリックと競争を繰り広げており、19年には3位だった世界シェアが、およそ4年で33%までシェアを伸ばしてトップとなったのである。
特に中国や米国、そして日本でも大型・高効率のガスタービン需要が拡大している。アフターコロナに伴う経済活動の再開に伴って、効率がよく、環境負荷のできるだけ小さい三菱重工のガスタービンが選ばれているようだ。
日本では緩和的な金融政策の継続によって大幅な円安が発生しているため、為替要因によって業績が押し上げられているのではないかという懸念もある。しかし、ガスタービンの世界シェアは出力ベースで調査がなされていることから為替要因以上に国内外からの受注が好調であることの表れであり、事業として健全に成長しているといって差し支えないだろう。
現に、三菱重工における同社の円安に伴う収益の増加要因は3000億円といわれているが、この影響を控除したとしても受注高は前年度比で増加している。他企業の間では賃上げや物価高に伴う原価や販管費の高騰によって為替要因で辛うじて増収増益、実質的には減益となっている者も少なくない中で、同社は着実に健全な成長を続けていることが分かる。
では、今年撤退を発表したMRJは全社業績の足を引っ張ってしまったのだろうか? 結論からいえば、そういうわけでもなさそうだ。
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