「俺の背中を見て学べ」 昭和の営業マンが見落としている、イマドキ部下の事情:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/3 ページ)
コロナ禍は落ち着いてきたものの、「若手の営業スキルが伸び悩んでいる」「今になって契約解除が増えてきた」という相談の声が絶えません。しかし、本当に足りていないのは営業スキルなのでしょうか? 昭和な上司が見落としがちな、イマドキ部下の事情について考察します。
営業がうまくいかない──。コロナ禍でたびたび、耳にした言葉です。
理由はシンプル。それまで「営業=対面」が常識でしたが対面が不可能になり、今までの手法が通じなくなったことが大きな理由です。「勘」は「データ」に、「信頼」は「数字」に置き変わり、どうにもこうにもかゆいところに手が届かない。
リモートでのコミュニケーションは対面に比べ、圧倒的に情報量が少ないので、「どこがかゆいのか?」さえ分からず、うまくいかない、と多くの人たちが嘆いていました。
それでもデジタル推進に会社も世の中も舵を切ったので、やるしかなかった。「うまくいってない」と感じつつも、問題が解決できないまま、取りあえず日常が回っていました。できる限り顧客とコミュニケーションを取り、なんとかんとか「走りながら考え」「考えながら変化させる」ことで乗り越えてきました。
中には「最後の最後で商談がまとまらなかったという事件が起きた。普通であれば、問題なくまとまる案件だったので、リモートでの限界を感じています」と嘆く声もありましたが、3年超にわたるコロナ禍で、最悪の事態を避けるための手だてを増やすことに成功。「人間って……案外、うまく適応するものだねぇ」と感心する経営者もいました。
若手の営業スキルが伸び悩んでいる なぜ?
ところが、ようやくコロナが落ち着いてきたものの、新たな課題に遭遇している企業が少なくありません。「若手の営業スキルが伸び悩んでいる」というのです。
下記は先日、ある企業が主催する講演会に呼ばれた時の、控え室でのやりとりです。
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