スタバの巧妙な価格戦略 2年連続の値上げでも炎上しなかったワケ:鍵はフラペチーノ?(3/4 ページ)
物価高が長期化するなか、企業による値上げも依然として世間を賑わせています。2023年4月にはスターバックスコーヒージャパンも値上げを発表し、注目を集めました。実は22年4月にも値上げを敢行していたスタバ。2年連続での値上げで、価格はどう変わったのでしょうか。
スターバックスラテが490円まで値上げできた真相
実は前回の値上げでもこうした傾向は見られていました。
当時、スターバックスの人気商品であるスターバックスラテの値上げをひも解こうと、同様の調査を実施しました。値上げ前のトールサイズの価格は418円。これを500円まで値上げすると売上は7.1%増加するものの、10.4%もの顧客が離反してしまうことが分かりました。一方で450円だと4.7%、460円だと7%売上が増加し、顧客の減少も2.7%にとどまります。
つまり顧客数の減少を最小限に抑えながら収益性を向上させたいなら、バランスのいい価格帯は450〜460円となります。そして実際にスターバックスは、455円という価格に値上げを決めていました。やはり顧客の支払い意欲を踏まえて、妥当な価格を算出していることが伺えます。
そして今回の値上げで、スターバックスラテは490円に値上げされました。これは前回時点で大幅な顧客離れが危ぶまれた500円に迫る価格です。どうしてそこまでの値上げに踏み切れたのでしょうか。
これには消費者の支払い意欲の「変化」が影響していると考えられます。
前回の値上げが行われた22年4月は世間的に値上げが本格化し始めたタイミングで、加速する報道に消費者も敏感でした。その後、6月頃からいよいよ値上げラッシュが続き、さらに秋以降は円安も相まったことでさらなる逆風にさらされました。
そうした市場の動きの中で消費者の意識に変化が起こり、値上げがネガティブなニュースであることに変わりはないものの、当初と比較して「またか」「仕方がない」といった捉え方も増えたように思います。
また消費者が商品を購入する際、大きな影響を与える要素の一つに「内的参照価格」があります。消費者は過去の購買体験から対象の商品が高いか安いかを判断しています。この消費者の記憶の中にある”高いか安いかの判断基準になる価格”が内的参照価格です。スターバックスの例でいえば、一度目の値上げ以降の購買経験によって顧客の内的参照価格が上昇し、22年時点では納得感が薄かった「ラテに500円」という価格が多くの消費者にとって検討圏内に入るようになったと考えられます。
とはいえ1年で72円もの大幅な値上げは、受け入れられるケースばかりではないでしょう。言い換えれば、スターバックスが顧客に対して「支払い意欲」を喚起するだけの高い価値を提供できている証拠といえるのではないでしょうか。
このように顧客の支払い意欲は、市場環境や顧客満足度によって大きく増減します。スターバックスは顧客満足度を高める価値提供に真摯に取り組むとともに、顧客の支払い意欲の変化を的確に把握し、増大する好機を狙って戦略的に値上げを実行していたと考えられます。
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