「ポケカ投資」ブームで最高益 “造幣局”と化したポケモンが、高額転売に取るべき「金融政策」とは:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/3 ページ)
「ポケモンカード」が投資対象として注目されており、中には数百万円、数億円の値段がついたものまで存在する。“ポケカ造幣局”というあだ名までついた株式会社ポケモンは、高額転売の現状にどんな「金融政策」を取るべきだろうか
ポケモンは「日銀」と同じ役割?
ポケモンカードの価値は、紙幣と同じように紙という材料そのものではなく、紙に描かれているブランドや信用にあるため、利幅(発行益)が大きい。
印刷することで多くの製品を量産できる点も紙幣と似ていることから、発行する同社には“造幣局”というあだ名までついた。(ちなみに、日本の造幣局は硬貨を製造するための機関であり、お札を刷っているのは「国立印刷局」である)
しかし、同社の役割をよく観察すると、同社は“造幣局”だけでなく中央銀行の役割までになっているといえる。
限定版やレアなカードは供給量が制限されており、レアリティのグレードに応じて封入率が調整されている。この点に、中央銀行の行う金融政策や貨幣政策と類似性があるといえるだろう。
今は、市場に供給されるポケモンカードの数が需要に追い付いておらず、ポケモンカードの価値が上がり続けている状態が転売や窃盗といった副作用を生んでいる。そのため、市場に供給されるカードの数を増やせば、多くのユーザーにカードが行きわたり、投機熱も収まるはずだ。
しかし、市場にレアカードを無制限に投入すれば、誰でもパックをそれほど買わずにレアなカードを手に入れられることとなり、同社の売り上げが低下するリスクがある。それだけでなく、ポケモンカードの「レアカード」に対する信用が低下することにもつながり、ユーザー離れを引き起こす可能性がある。
転売対策としてカードを単に大量発行させてしまうと、行き過ぎた「円安」ならぬ「ポケカ安」を引き起こす可能性があり、発行者側の収益性を蝕(むしば)んでしまうというデメリットがある。
このように、カードのような商材を取り扱う会社のビジネスパーソンにとって、金融政策を理解することは非常に有効だ。
関連記事
- 建設業の倒産が急増している「3つの理由」とは?
帝国データバンク(東京都港区)は、建設業の倒産発生状況についての調査・分析結果を発表した。工期長期化・人手不足・資材高の3つの主な原因のため、2022年度は3年ぶりに倒産が増加した。倒産件数は21年度と比較して19%上昇した。 - 日本人の“働く幸福度”、世界最低に 調査で分かった「3つの理由」
パーソル総合研究所(東京都港区)は、18カ国・地域を対象に実施した「グローバル就業実態・成長意識調査−はたらくWell-beingの国際比較」の結果を発表した。日本は、調査対象国の中で、“働く幸福度”が最下位だった。 - スシロー、おとり広告で「信用失墜」し客離れ──それだけではない業績悪化のワケ
最近のスシローといえば、おとり広告の問題で景品表示法に係る措置命令を受けてしまった件は記憶に新しいことでしょう。こういった問題が起きるとどのような影響があるのかを「減損損失」という視点から見ていきます。 - 社長は「トヨダ」氏なのに、社名はなぜ「トヨタ」? “TOYODA”エンブレムが幻になった3つの理由
日本の自動車産業をけん引するトヨタ自動車。しかし、同社の豊田社長の名字の読み方は「トヨダ」と濁点が付く。なぜ、創業家の名字と社名が異なるのか? 経緯を調べると、そこには3つの理由があった。 - 「部下を育てられない管理職」と「プロの管理職」 両者を分ける“4つのスキル”とは?
日本企業はなぜ、「部下を育てられない管理職」を生み出してしまうのか。「部下を育てられない管理職」と「プロの管理職」を分ける“4つのスキル”とは? 転職市場で求められる優秀な管理職の特徴について解説する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.