トヨタ新型「アルファード」と「ヴェルファイア」の正常進化:池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/5 ページ)
トヨタ自動車は、「アルヴェル」と呼ばれる人気の「アルファード」「ヴェルファイア」をフルモデルチェンジ。ミニバンの宿痾ともいえる2列目シートの振動問題が解決された。詳しく見ていこう。
6月21日、トヨタ自動車は「アルファード」と「ヴェルファイア」をフルモデルチェンジして発表した。コンセプトは「快適な移動の幸せ」である。
この兄弟車はご存じの通り、2台合わせて「アルヴェル」と呼ばれる人気モデルで、トヨタを代表するドル箱商品。新型の価格はアルファードが540万〜872万円、ヴェルファイアが655万〜892万円と、お値段も威風堂々。でありながら販売計画は月8500台というから恐れ入るしかない。ちなみにその8500台の内訳はアルファードが7割、ヴェルファイアが3割だそうだ。
自販連(日本自動車販売協会連合会)が毎月発表する車名別の月間販売台数のトップは、4月が「ヤリス」の1万4143台、5月が同じく「ヤリス」の1万2714台となっている。価格のスタートラインが500万円を超えるクルマでありながら、8500台の計画は驚くに値するだろう。
なぜアルヴェルはそんなに人気なのか
では何でそんなに人気があるかということになるが、それはアルヴェルが新しいジャンルの確立者としてブランド化できているからだ。
いささか古典的な物言いなのを承知で言えば、自動車の基本形はセダンである。ところが、いまやセダンは販売台数的には凋落(ちょうらく)して、トヨタでさえ国内マーケットからカムリを撤退させるような体たらくである。だが、歴史的に見れば、セダンは大人4人が荷物とともに長距離を移動できるマルチロール性に優れたボディタイプとして長く支持されてきた。
特に欧州において、時速150キロを越える速度で、長距離移動をこなす能力を求めると、重心の高いクルマでは走行性能的に厳しい。その速度域での性能条件を満たしながら、室内空間を可能な限り求め、かつ乗り物の世界のプロトコルとして「人と荷物のコンパートメントを分けるのは作法」という要求をかなえるならば折り合うポイントはセダンしかなかった。だからこそセダンがクルマの中心として君臨していたわけだ。
この条件は時代とともに徐々に変わり、環境問題や安全性への意識が高まるにつれて、超高速巡行性能への要求が徐々に薄まっていった。同時にベルリンの壁崩壊後、欧州は東西統合が進んで、旧東側の人たちもクルマを手に入れるようになり、道路のキャパに対してクルマの台数が増えた。旧来のような速度での移動が困難になるに連れ、速度への要求がトーンダウンして行ったのだ。代わって求められるようになったのはスペースである。
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