Apple Vision Proと「空間コンピュータ」は、メタバース市場をひっくり返すことができるか(4/5 ページ)
アップルが自社のゴーグル型デバイスである「Apple Vision Pro」を発表。専用OS「VisionOS」のソフトウェア開発キットの配布も始まった。早速SNS上でも、開発者の感想やサンプル動画が複数あがっている。
(シナリオ3)アップルとメタがそれぞれ独自市場を構築する
この記事では、あえてメタの「Meta Quest」とアップルの「Apple Vision Pro」を同じ市場のライバルとして比較していますが、多くの専門家の意見を聴く限り、両者を全く別の製品と位置付けた方が正しいようです。
(参考:Apple Vision Pro発表を見た、VR機器メーカー中の人視点でのいち見解)
実際に両者の商品紹介動画を比べて観れば、その違いは一目瞭然です。メタも秋に発売する「Meta Quest 3」でカラーパススルー機能を実装しており、ある意味「Apple Vision Pro」と近いことができる端末にはなっています。
ただ、その動画の中でアピールされているのは、とにかくゲーム、ゲーム、ゲームです。実際に、現在「Meta Quest」シリーズを購入したユーザーの多くが楽しんでいるのは、「Beat Saber」などのゲームや「VRChat」のようなメタバースサービスであるといわれています。
一方で「Apple Vision Pro」がアピールするのは「空間コンピュータ」の概念の名の通り、既存のコンピュータ環境を3次元空間に投影できてしまう未来です。
ティーザー動画も、発表会でアピールされている利用ケースも、大画面で仕事をしたり、既存の映像コンテンツを大画面で楽しんだりという場面がほとんどで、ゲームの事例はほとんど出てきません。唯一出てくるゲームの事例は、Apple Arcadeの既存ゲームを大画面で楽しめるというものだけです。
これには、現在の「Beat Saber」のような既存のVRゲームのほとんどは、コントローラーで操作することを前提としているため、簡単な移植は難しいという点もあるようです。
当然、これからさまざまな開発者が「Apple Vision Pro」専用のゲームを開発することでこれらの状況は変わってくるでしょう。
ただ、少なくとも短期的には、「Meta Quest」がどちらかというとファミコンやプレイステーションなどの初期のゲーム端末に近い市場であって、「Apple Vision Pro」はどちらかというと初期の家庭用PCという違う市場の商品で、両方ともまだ生まれたばかりの別の市場を切り開いていく、と考える方が現実的なのかもしれません。
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