2000万円超えの高級車「センチュリー」 なぜSUV化するのか:鈴木ケンイチ「自動車市場を読み解く」(2/3 ページ)
現在、日本で唯一のショーファーカー(専用運転手付きのクルマ)であるトヨタ「センチュリー」。年内にもSUVモデルの登場が予告され、注目を集めています。そこで、センチュリーがどれほど特別な存在なのかを解説します。
ハンドメイドで作られるセンチュリー
センチュリーは、その作り方も普通のクルマと全く異なります。現行モデルが登場した翌年、筆者は、当時は東富士にあったセンチュリーの生産現場を取材したことがありました。そこには誇らしげに「センチュリー工房」との看板が掲げられていたのです。
驚くべきことにベルトコンベヤーはなく、1台ずつ人の手でクルマが運ばれていました。プレスこそ機械を使っていましたが、そのホワイトボディーを手作業で仕上げていくのです。センチュリーの生産は、“工房”の名にふさわしいハンドメイドで行われていました。
最初に見学できたのは、ボディーのフロントからリヤまで、真っすぐに伸びるプレスラインの仕上げ加工です。センチュリーのプレスラインの角は、プレスしてできたものを、さらに人の手で丁寧に加工しています。いわゆる「几帳面」と呼ばれるもので、ラインとなる角の両脇が絶妙にえぐれているのですが、これは人の手でヤスリがけなどをして作り出されています。
ドアを取り付けるときは、あらかじめドアの自重で下がってくることを想定して、微妙に斜めに取り付けます。もちろん、取り付けた後の角度を何度も確認しながら作業していました。その手間があるからこそ、フロントからリヤまで、ドアを乗り越えての真っすぐのプレスラインが実現しているのです。
塗装にも驚かされました。通常のクルマの塗装は4層塗りですが、センチュリーは7層。しかも、途中で水を流しながら手で磨く「水研ぎ」を行います。そのため、塗装だけで3〜4日かかるとか。驚くというよりも、あきれるほどの品質重視の工程が採用されているのです。その他、室内の装備類のも手作業で慎重に装着。最後には、工房の一角に用意された検査工程で、光を当てながら徹底的にチェックされていました。
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