リファラル採用のインセンティブ、何万円まで法律的に問題ない? 疑問を解説:労働基準監督署に聞いた(1/2 ページ)
リファラル採用を取り入れる企業が増えていますが、紹介のインセンティブはいくらが一般的なのでしょうか? また、何万円までの支払いであれば法律的に問題ないのでしょうか?
人材獲得に悩む企業が多い昨今、社員に友人や知人を紹介してもらうリファラル採用が注目を集めています。新たに導入を検討するにあたり、運用方法に不安を感じている企業も少なくないでしょう。
そこで今回はインセンティブの上限額など、リファラル採用の疑問について法律的な観点を交えて解説します。
増えるリファラル採用、企業は何を期待している?
人手不足の影響により求人にかかる費用を負担に感じている企業も多いのではないでしょうか? 社会保険労務士である筆者の顧問先企業では、今までハローワークに中途採用の求人情報を掲載していましたが全く応募がないので、有料の求人メディアへの出稿や人材紹介会社を使い始めましたというところもあります。無料で掲載できるハローワークと異なり、こうした媒体を利用すると費用が発生します。
リファラル採用の場合も、紹介者に対するインセンティブと採用活動のための経費が発生します。しかし人材紹介会社を利用して採用した場合と比べて少額で収まります。紹介会社に支払う成功報酬は、採用者の想定年収(初年度)の30%といわれています。年収400万円の人を採用した場合、紹介会社に支払う金額は120万円となりますが、リファラル採用のインセンティブとして120万円支払われることはまれかと思います。リファラルの方が金銭面での負担は少なくて済むでしょう。
また採用のための費用は、求人メディアなどへの広告費、人材紹介会社への成功報酬などの外部コストの他、採用担当者や面接対応者の人件費などの内部コストと言われるものもあります。リファラル採用では、内部コストも減らせます。大企業と異なり、中小企業では人事担当者などがいない場合もありますので、現場の責任者が日常業務を調整して応募者の書類を精査したり、面接したりすることが多々あります。リファラル採用の場合、紹介者のフィルターを通してある程度のスキルや人間性が担保されることが多いのでこうした書類選考にかける時間をカットできます。
リファラル採用は、求人活動にお金や時間をかけられないスタートアップ企業を皮切りに、人手不足の業界や派遣社員の採用などにも利用が広がっていきました。今では業種を問わず導入する企業が増えています。マイナビが発表した「中途採用状況調査(2021年版)」ではリファラル採用を導入している企業は全体の56.1%に上りました。
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