「新宿駅」と「渋谷駅」はなぜ複雑になったのか:経済の「雑学」(2/4 ページ)
東京には巨大ターミナルが複数あるが、新宿駅や渋谷駅は非常に複雑化している。一方、東京駅は規模のわりには複雑さがないのはなぜか。その理由は……。
複数の路線が乗り入れ巨大ターミナル化した新宿駅
そのころ、現在の埼京線、湘南新宿ラインのホームがあるあたりや、タカシマヤ タイムズスクエアの周辺は、貨物のための駅施設として使用されていた。都心が発展するにつれ、新宿駅周辺もにぎやかになっていく。
小田急電鉄(以下、小田急)が新宿を起点とするようになり、路面電車の軌道線として開通した京王電鉄(以下、京王)は、現在の新宿三丁目あたりで路面電車と接続、甲州街道上を走ることになる。こうして、新宿駅は複数の鉄道の乗換駅として機能するようになった。
戦後も新宿駅の発展は続く。終戦直前に京王は新宿西口へ移り、その後京王も小田急も地下へと移る。西武鉄道も歌舞伎町まで路線を延伸し、西武新宿駅となる。西武鉄道には新宿駅への乗り入れ計画もあった。そのほかにも営団地下鉄丸ノ内線(現在の東京メトロ丸ノ内線)の新宿駅ができた。
その後都営新宿線と京王新線が直通、都営大江戸線もでき、新宿駅周辺には複数の「新宿」を名乗る駅が誕生した。あわせて、駅を利用したビジネスも盛んになっていった。京王や小田急は百貨店をつくり、地下鉄もビルを建てる。国鉄時代には既に「民衆駅」として駅ビルを建てている状態だった。
鉄道事業もその他の商業も、線路を軸に広がった。その過程で、駅構造が複雑化し、分からない人はどこをどう行けば目的地にたどりつくのか見当がつかないようになってしまった。都市の発展が、逆説として混乱を生み出したのだ。
似たような形態の駅としては、池袋駅が挙げられるだろう。もともとは山手線の駅だったが、鉄道網と商業施設の充実により、駅全体の規模が広がっていき、現在のような巨大ターミナルとなった。
一方で、ある程度計画的につくられたターミナルもある。東京駅だ。
関連記事
- 東京駅に「立ち食いそば」が少ないのはなぜか
東京駅の改札内には「立ち食いそば」の店が1店舗しかない。同じく首都圏のターミナルである新宿駅や上野駅と比較しても少ないが、その理由は……。 - 「ラウンドアバウト」ってなに? JR新宿駅で人がぶつからないように実験
多くの人が行き交う駅では、どのようにして人々の混雑を解消しているのだろうか。JR新宿駅ではこのたび、「人の流れ」を新たに作り出す試みが行われた。それは……。 - 次の「新幹線」はどこか 計画をまとめると“本命”が見えてきた?
西九州新幹線開業、北陸新幹線敦賀延伸の開業時期が近づいている。そこで今回は、新幹線基本計画路線の現在の動きをまとめてみた。新幹線の構想は各県にあるが、計画は「建設を開始すべき新幹線鉄道の路線を定める基本計画」として告示されている。これと費用便益比、各地のロビー活動の現状などから、今後を占ってみたい。 - “期待外れ?”の京阪電鉄中之島線はこのままなのか 再生のカギは2つ
京阪電鉄中之島線は、大阪市の中之島地区を東西に貫く約3キロメートルの地下路線だ。大阪中心部の東西交通と、中之島西部地区再開発の期待を受けて建設されたが、その期待に十分に応えられずに今日に至る。しかし、今度こそ使命を果たせるかもしれない。 - 江ノ電の名物「12分ダイヤ」はなぜ終了したのか 70年も続いたのに
「江ノ電」は、神奈川県の藤沢市と鎌倉市にまたがって走る電車だ。名物の1つに「12分ダイヤ」があり、70年以上も変わらず使われてきた。しかし2023年3月18日のダイヤ改正で、その伝統が終わった。江ノ電は14分間隔になった。伝統が終わった背景と、14分間隔になった理由を紹介する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.