クロネコマーク、生みの親は社員の子ども 64年目に初リニューアルのワケ:経済の「雑学」(2/2 ページ)
「クロネコヤマトの宅急便」でおなじみのヤマトホールディングス。そのシンボルとして広く知られているクロネコマークは、どのようにして生まれたのでしょうか。
経営危機から生まれた「宅急便」
ヤマトホールディングスは1919年、銀座でトラック4台を保有する運送会社として始まりました。当時、日本国内のトラックの数は204台だったそうです。創業11年目の29年に東京〜横浜間を結ぶ定期便事業を開始し、規模を拡大していきました。
しかし、60年代半ばから状況は一転します。高速道路が次々に完成したことで、長距離輸送に他社が次々と参入。こうした市場の変化を見逃したことと、73年に発生したオイルショックも相まって、厳しい状況に追い込まれます。そこで、起死回生の一手として目を付けたのが小口荷物でした。
当時は「小口荷物は、集荷・配達に手間がかかり採算が合わない。大口の荷物を一気に運ぶ方が得だ」というのが、運送業界の常識でした。しかし「小口荷物の方が単価が高いということは、たくさん扱えば収益が増える」と発想を転換。76年1月20日に「宅急便」を始めました。初日に預かった荷物はわずか11個だったそうですが、今では年間約23.3億個(2023年3月期)の荷物を扱っています。ちなみに「宅急便」という単語は同社の登録商標です。
それまでの業界の常識を打ち破り、運送業界に宅急便という新しい活路を生み出した同社。その精神は、クロネコマークの変更と同時に新しく生まれた「アドバンスマーク」に引き継がれています。
同社担当者によると、アドバンスマークは「新しい価値提供への『挑戦』の象徴」とのこと。そのため、ドローンによる輸送の実証実験や、24年4月から開始する長距離輸送のための貨物専用機といった、新サービスや新事業に使用されています。
物流業界では、働き方改革によって時間外労働時間の上限が年間960時間に制限される「2024年問題」への対策が喫緊の課題となっています。同社も例外ではなく、配送体制の見直しや日本郵政グループとの協業などを打ち出しました。創業者がクロネコマークに込めた丁寧な荷扱いへの思いは変えない一方で、新しい働き方に沿った事業展開が求められています。
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