人的資本開示、企業価値は何で決まる? 投資家が見る「3つのポイント」:会社全体で考える「人的資本」(1/4 ページ)
23年1月31日に改正された「企業内容等の開示に関する内閣府令」などが公布・施行され、今後は大手上場企業約4000社を対象に人的資本に関する情報開示が義務化されることとなっている。投資家は今後、開示情報に注目をして投資判断を行うこととなるが、どのような観点で開示情報に注目すればよいのだろうか?
会社全体で考える「人的資本」
人的資本経営といっても、経営者、人事担当者、投資家など、立場によってその取り組み方、考え方は異なるものだ。本連載では、株式会社タナベコンサルティングのエグゼクティブパートナー 古田勝久氏が、それぞれの立場に立った取り組み方を解説する。
中長期的な企業価値向上の根幹と位置付けられる人的資本の情報開示は投資家にとっても重要であり、当然注目している。注目が高まった理由は、経済産業省が2020年9月に公表した「人材版伊藤レポート」の影響が大きい。
経営戦略に連動した人材戦略の必要性と、従業員への人材投資の重要性は、ESG投資の「S(Social:社会)」に該当する。22年5月には「人材版伊藤レポート2.0」も公表され、22年は「人的資本経営元年」ともいわれるようになった。
投資家にとって主流となっているESG投資に呼応するかたちで、先進的な上場企業は統合報告書などを活用した情報開示に取り組んでいる。投資家は今後、開示情報に注目をして投資判断を行うこととなるが、どのような観点で開示情報に注目すればよいのだろうか。
人的資本の情報開示は「独自性」に注目!
22年8月に内閣官房が策定した「人的資本可視化指針」では、開示項目は2種類あるとされている。
1つ目は「比較可能性の観点から開示が期待される事項」である。組織や投資家が人的資本の状況を定性的かつ定量的に把握することを目的に定められた「国際標準ISO30414」などの国内外の開示基準に基づき、自社の経営戦略・人材戦略と関連性が深い項目を中心に、他社と比較できるかたちで開示することが求められる。
2つ目は「自社固有の経営戦略やビジネスモデルに沿った独自性のある取組み・指標・目標」に関する開示である。ステークホルダーに対して、自社の経営戦略と開示項目の関連性、その開示項目やその指標などに対する経営者の意思・意図についての開示が期待される。
投資家にとってはどちらも重要だが、前者の比較可能な与えられた指標よりも、後者の方が企業独自の取り組み、考え方を知れる点でより注目度は高くなるはずだ。企業が独自の取り組みを行うために「人材版伊藤レポート2.0」にある「3つの視点と5つの共通要素」をどう活用しているかどうかが見極めのポイントだ。
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