人的資本開示、企業価値は何で決まる? 投資家が見る「3つのポイント」:会社全体で考える「人的資本」(2/4 ページ)
23年1月31日に改正された「企業内容等の開示に関する内閣府令」などが公布・施行され、今後は大手上場企業約4000社を対象に人的資本に関する情報開示が義務化されることとなっている。投資家は今後、開示情報に注目をして投資判断を行うこととなるが、どのような観点で開示情報に注目すればよいのだろうか?
投資家が見るべき「企業価値向上ストーリー」
生命保険協会による「企業価値向上に向けた取り組みに関するアンケート(2022年度版)」では、投資家が重視すべき中長期的な投資・財務戦略の項目について、「IT投資(DX対応・デジタル化)」(64.9%)や「研究開発投資」(52.6%)を抑え、「人材投資」が72.2%と最も多くなった。それほどに人的資本への投資に対する投資家の注目度が高まっているといえる。
投資家にとっては「人材を資本として捉え、投資をした結果、何が、どのように変化し、結局中長期的な企業価値は向上したのか?」が本質的に知りたいことである。
その際の定量的な指標として参考になるのが、ISO30414である。「社内外への人事・組織に関する情報開示のガイドライン」として18年12月に新設され、海外ではすでに浸透してきており、日本国内でも大企業を中心にこれに対応する動きが始まっている。
具体的には11領域(さらに細分化された49項目)が示されており、人的資本が組織の成長にどれくらい貢献しているのかを明らかにすることが期待されている。
ところがESG投資に積極的な投資家にとって、これらの指標は参考にはなっても、断片的な定量データだけでは前述した“本質的に知りたいこと”の根拠としては不十分と感じるだろう。投資家にとって重要なことは、その企業が「どの項目を改善しようとしているのか」「そのためにどのような施策を打とうとしているのか」「その結果、企業価値は向上するのか」といった一連の「企業価値向上ストーリー」に注目することだ。
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