人的資本開示、企業価値は何で決まる? 投資家が見る「3つのポイント」:会社全体で考える「人的資本」(4/4 ページ)
23年1月31日に改正された「企業内容等の開示に関する内閣府令」などが公布・施行され、今後は大手上場企業約4000社を対象に人的資本に関する情報開示が義務化されることとなっている。投資家は今後、開示情報に注目をして投資判断を行うこととなるが、どのような観点で開示情報に注目すればよいのだろうか?
これらの施策は、一朝一夕に成果が出るものではない。数年かけて継続していくことで成果が表れ始める。そのため、投資家としては、短期的な視点ではなく、上記の3つのポイントを踏まえて5年先の成果につながるかを見極めることが必要だ。短期的視点で捉えることは、人材を「資源」(消費対象=コスト)として捉えてしまいかねない。人材を「資本」(投資対象=価値)として捉えることが人的資本経営の大前提であることを忘れず、5年後のリターンという視点で投資判断していただきたい。
今後、企業の働き手は、スキルや能力という人的資本を保有する資本家として、自己投資(自己啓発)を行うことでその価値を高めようとするだろう。企業も、その資本家(働き手)に対してどのような投資を行うか、設備投資・金融投資ではない人的投資における投資家的機能も求められるようになる。つまり、株式市場における機関投資家は、その企業の経営者が人的資本の投資家として“中長期的な成長”というリターンをもたらすことができるかどうか、ステークホルダーの声に耳を傾けながら、開示される情報と企業との対話をもとに、投資判断していくことが求められる。
著者プロフィール
古田勝久(株式会社タナベコンサルティング エグゼクティブパートナー)
自動車部品メーカー、食品メーカーの人事部門にて採用・人材育成・人事労務業務を経て、タナベコンサルティングへ入社。
現場で培ったノウハウをもとに、戦略的な人事・組織の実現に向けて経営的視点からアプローチし、大企業・中堅企業の成長を数多く支援している。
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