時価総額は2兆円 医療IT「エムスリー」の圧倒的なビジネスモデルに迫る:勝手に考察!「隠れ優良企業」のビジネスモデルに学ぶ(4/4 ページ)
医療ITベンチャーとして存在感を示す「M3(エムスリー)」の圧倒的なビジネスモデルを紹介。同社の今後の成長についても勝手に考察していきます。
第二の柱なるか、海外事業はどこまで伸びる?
同社はM&Aを有効活用し、海外事業を継続的に成長させています。5年で約50社をM&Aしているので、年間10社以上をM&Aしている計算です。
国内の9割以上の医師の囲い込みに成功していることにも驚きですが、実はM&Aの継続展開により海外でも約半数の医師の囲い込みができています。国ごとにばらつきはあるものの、多くの先進国で半数以上の医師を囲い込んでいます。
「すでに半数以上の医師を囲い込んでいるのであれば、もう今後は海外売り上げの成長は見込めないのでは?」という声も聞こえてきそうですが、実際にはまだ事業の起点となる医師の囲い込みを先行的に実行しただけであり、そのネットワークを活用したマネタイズはまだまだこれから続くのだろうと思います。
国内事業だけで1500億円以上の売り上げがあるのだから、海外事業全体の現状売り上げ600億円はまだまだ拡大の余地がある、と考えられます。今後もM&Aを活用した海外事業が同社の成長をけん引しそうです。
以上がエムスリーの分析になります。業界の全てを飲み込む勢いで成長している同社、特に業界特化型の事業を展開している読者には参考になる点が多いビジネスモデルではないでしょうか。
次回は、会計・人事・給与・販売・管理・生産などの各業務を横断する統合業務ソフトウェア「OBIC7」を展開する、オービック社を取り上げます。
著者紹介:林圭介(はやし・けいすけ)
慶應義塾大学を卒業後、就職という選択をとらず独学で学び、個人事業主としてWeb制作・マーケティング支援事業を展開。その後事業拡大で店舗ビジネスに挑戦するも自らのスキル、事業経験のなさからあえなく失敗。成功のために必要な経験を積む必要があることを痛感。28歳にして初めて会社員としてITベンチャーの門を叩く。
その後Webマーケティングコンサル、出版社と提携してWebメディアの立ち上げ、SaaSモデルのクラウドツールの開発・販売など幅広くITビジネスの立ち上げやグロースに携わり、現在では教育系上場IT企業のCOOを務める。
ビジネスは現場での経験が最も大事だと感じる一方で、「ベースとなる学びの機会」がITベンチャーには不足しているなという考えから、個人としてもビジネスモデルや資料作成ノウハウ等を初級者に対して勉強会主催やメンターという形で支援。「事業がつくれるベンチャーマネージャーになるためのnote」を運営。
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