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なぜ「AFURI」は炎上したのか 商標権めぐる主張で重ねた「悪手」本田雅一の時事想々(2/5 ページ)

「AFURI」をめぐる商標権争いが、係争相手の吉川醸造によって表面化し、炎上している。ネットでは、商標権を保有するAFURIへの批判的な意見が多い。なぜ、AFURIは当たり前の権利を主張しているのに炎上したのか。

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知財戦略としてはまっとうだったAFURIの動き

 AFURIは実際「AFURI」銘の店舗を海外にも展開し、他業種とのコラボレーションを進めていた。吉川醸造はAFURIが「阿夫利」「AFURI」を記した商標をラーメン以外、150種類以上の物品・役務について取得していると指摘している。

 ただ、商標の登録申請を行う時点では展開していない領域であっても、登録を行っていくことは知財戦略上、特別なことではない。またAFURIは実際に日本酒の販売を自社ブランドで行っていた実績もあった。

 2020年4月14日に「AFURI」を清酒において出願したものがある。出願した商標はローマ字のみで、参照情報として「あふり」と呼称するとなっていた。この出願に先立って17年には青森県の酒蔵に外注する形で「AFURI」という日本酒商品も、海外店舗で企画販売していた。

 AFURIが出したニュースリリースによれば、日本でも「阿夫利 AFURI」とラベルに印刷された日本酒を販売しており、海外での日本酒販売を経て、日本酒の製造販売を推し進めようとしていたことが伺える。

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AFURIのニュースリリースより

 吉川醸造が「雨降り AFURI」と表記したラベル、パッケージの日本酒を発売したのは21年4月発売のことだ。商標として「雨降」を出願したのは21年1月27日のことで、あらかじめ調査した上で商品名を決め、商標出願したものだと考えられる。

 ちなみに登録申請されていたのは漢字表記と毛筆で書かれた「雨降」の意匠だけであり、アルファベットでの記載はない。参照情報としての称呼も「あめふり」「うこー」「あふり」の3つが記載されており、申請だけを見れば漢字表記のみを登録し、読み方に関しては特に規定していないようにも見受けられる。

 冷静にこれらだけを評価すれば、AFURIに落ち度があるようには考えられないという意見は至極まっとうなものだ。先にAFURIを酒類で商標登録し、実際に日本酒製品を出荷していたAFURIは、これほど否定的な意見と向き合うことになるとは想像していなかっただろう。

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