2015年7月27日以前の記事
検索
ニュース

EVは静寂が売りなのに 各社が「疑似エンジン音」を開発するワケ鈴木ケンイチ「自動車市場を読み解く」(3/3 ページ)

多くの自動車メーカーから新型EVが続々と登場しています。「静か」であることに重きを置くユーザーが多い一方、あえて「サウンド」にこだわるメーカーも。サウンドとクルマの関係に迫ります。

Share
Tweet
LINE
Hatena
-
前のページへ |       

EVサウンドと運転しやすさの関係

 また、操作に対するフィードバックがあるということは、運転のしやすさにも通じます。マツダに取材したところ、EVサウンドのあるなしで比較すると、EVサウンドありの方が、ドライバーはクルマの速度を上手に調整できたとか。

 もちろん、アクセル操作による加速度の変化もフィードバックとなります。それにEVサウンドを追加した方が、よりドライバーはクルマの動きを実感することができるというわけです。

 もう1つ考えられるEVサウンドの価値は、差別化=ブランディングです。今のところ、EVサウンドは自動車メーカーが独自に作ったものを使用しています。マツダ「MX-30EV」はモーターの拡張版のようであったのに対して、日産「アリア」やメルセデス・ベンツのEVサウンドは宇宙船のようなSFチックなモノでした。BMWはEVサウンドの作成には、アカデミー賞の受賞経験がある映画音楽の作曲家が関わっているとか。つまりメーカーごとに異なるEVサウンドが、そのブランドの魅力の1つとなる可能性があるのです。

ev
メルセデス・ベンツ「サウンドエクスペリエンスSerene Breeze」(公式プレスルームより引用)
ev
BMWのEVサウンドは、アカデミー賞を受賞した映画音楽の作曲家が担当(公式プレスルームより引用)

 ただし、EVサウンドは始まったばかり。まだまだ「EV=静か」であることに重きを置くユーザーも多いようです。実際、EVサウンドを備えていたマツダ「MX-30EV」は、一部改良によりEVサウンドの音量を下げています。「MX-30EV」のEVサウンドは常時作動するもので、サウンドなしを選択することができず、一部ユーザーから不評を買ったのが理由だとか。ちなみに、日産「アリア」は、一部の走行モードのときだけEVサウンドが聞こえます。

ev
マツダ「MX-30EV」(公式プレスルームより引用)

 このようにEVサウンドはまだまだ手探り状態といえるでしょう。そもそもどんな音がいいのか? 音の種類は1種類でいいのか、それとも複数がいいのか? 常に使うのか? それとも特別な走行モードの時だけ使うのか? など何も定まっていません。「EVサウンドの定番」がそろうのには、まだまだ時間がかかるはず。新しいEVに乗る際は、どんなEVサウンドが用意されているのかにも注目です。

筆者プロフィール:鈴木ケンイチ

1966年9月生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく“深く”説明することをモットーにする。


前のページへ |       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る