EVは静寂が売りなのに 各社が「疑似エンジン音」を開発するワケ:鈴木ケンイチ「自動車市場を読み解く」(2/3 ページ)
多くの自動車メーカーから新型EVが続々と登場しています。「静か」であることに重きを置くユーザーが多い一方、あえて「サウンド」にこだわるメーカーも。サウンドとクルマの関係に迫ります。
なぜEVは面白くないのか
まず考えられるのは、運転を楽しくする演出としての必要性です。
エンジンを搭載するクルマの魅力の1つに、エンジン音が存在します。重要なのは、エンジン音はドライバーの操作によって大きくも、小さくもなるということ。ただ大きな音というだけでは、騒音にしかなりません。そうではなく「自分が操作している」、つまり「エンジンという巨大なパワーを発生させる機械を、自由自在に扱えるうれしさ」が潜んでいるのです。
EVはエンジンがないため振動もない上に、モーターの回転する音はごくごく小さいため、ドライバーにまで届きません。だからこそ、EVは静かで快適とされているのです。ところが、静かということは反応がない、ということでもあります。のれんに腕押し、糠に釘(くぎ)。面白みという点でみると、EVはエンジン車に大きく劣ってしまいます。
クルマを移動の手段と割り切れば、こうしたうれしさは必要ないでしょう。しかし、運転そのものに楽しみを見いだしたい人にとっては、欠点となります。
ホンダ「シビック」のハイブリッド仕様車は、わざわざアクセル操作に応じてエンジン音が変化して聞こえるように工夫されています。本来はモーター駆動なので、エンジン回転数は一定で構いません。しかし、わざわざ手間をかけてアクセル操作に対応するように制御しているのです。
実際に乗ってみたところ、モーター駆動なのに、まるでエンジン車のような面白みがありました。アクセル操作に反応するEVサウンドがあった方が、運転が楽しくなるのです。
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