株の売買手数料、ついに「無料」時代へ 最大手SBI証券「ゼロ革命」で揺れる各社:真っ向勝負か、戦いを避けるか(2/3 ページ)
ネット証券首位のSBI証券と第2位の楽天証券は、10月以降、いずれも国内株式取引の手数料を完全無料化する。その背景には何があるのか、無料化後何が起きるのかを探っていこう。
手数料無料化に追随する楽天証券
業界トップのSBI証券が取引手数料を無料化する中、競合他社は厳しい選択を迫られた。SBI証券と真っ向勝負し打ち勝っていくためには、同様に手数料を無料にすることが必要だ。一方でSBI証券との勝負は避け、一部の顧客を相手に、収益性の高いニッチ領域の事業を目指すという選択肢もある。
ここで真っ向勝負を選んだのが楽天証券だ。SBI証券と同日に手数料無料化を発表。完全対決の姿勢を見せた。
それはそうだ。5大ネット証券と呼ばれてはいるものの、口座数で見ても預かり資産残高で見ても、SBI証券と楽天証券が抜きん出ており2強。総合的にはSBI証券のほうが規模が大きいが、楽天証券はクレカ積立やNISA口座などに強く、つみたてNISAでは55%のシェアを誇る。口座数も楽天証券は924万口座と急進しており、SBI証券は単体での口座数開示を取りやめ、現在は“グループ全体で1046万口座”と表現している。
もっとも楽天証券は手数料無料化に積極的ではない。SBI HDによる手数料無料化宣言に対して各社が対策を検討する中、楽天証券の楠雄治社長は22年春の筆者の取材に対し、「無料にするとかしないとか、明確なスタンスは取らない。競争上、無料にせざるを得ないならやらなくてはいけない。前向きに無料にするという考えはない」と話している。
今回の無料化も、SBI証券の発表を想定して準備はしていたが、できればやりたくはなかったというのが本音であろう。
他方、楽天証券以外のネット証券は、手数料無料化に追随することは考えにくい。収益に占める手数料の比率が大きいからだ。そして無料化しなくても、既存顧客はそうそう離れない。実際、マネックス証券は競合の手数料無料化策の発表に応じて、手数料を無料化しないことを発表した。
「手数料については維持する。重要なのは、顧客の資産が増えていくことに貢献していくこと。手数料がないからといって、上手ではないトレーディングをして資産が減ってしまっては元も子もない。日本株手数料についても、適切な額がある」と9月4日に行った戦略発表会でマネックス証券の清明祐子社長はその意図を説明した。
他社が「一日100万円以内無料」「25歳未満無料」などの限定的な手数料無料化策を出していく中、マネックス証券は基本的に無料化策を取ってこなかった。しかし総口座数も稼働口座数もじわりじわりと増加している。
「そもそも22年3月に大幅な手数料引き下げを行うまで、マネックス証券は国内株の手数料が高いといわれてきた。それでも顧客はわれわれのサービスがいいと言ってくれている。引き続き、満足いただけると思っている」(清明氏)
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