猛暑で大活躍のネッククーラー ずっと涼しい秘密は「とある素材」に隠されていた(2/3 ページ)
暑い日々が続く中、首に引っ掛けるリング状のネッククーラーが人気だ。人気の秘密は「人肌にちょうどいい冷却効果が持続する」という点だ。すぐぬるくなってしまいそうだが、どのような秘密があるのかというと……
大流行のきっかけは?
実はネッククーラーに採用される前から、PCMは気付かないうちに私たちの生活シーンに浸透していた。今から3年前、三木理研は大手量販店が展開する冷感マットレスに「マイクロカプセル」という小さな密閉容器にPCMを閉じ込めるという提案をした。
「通常のPCMは固まると板のようにカチカチになってしまいます。でも、私たちが開発したマイクロカプセルは数マイクロメートル〜数百マイクロメートル と非常に粒度が細かいため、布団のように柔らかい質感を出せます」(三木氏)
この冷感マットレスに横たわると小さなカプセルのPCMが溶けつつ体温を奪うので、ヒンヤリした感触を得られるというものだ。また寝返りをうつ度に溶けたPCMが室温で凍り(凝固)、暑い夜でもヒンヤリ感が続くというアイデア商品である。
年々、熱帯夜が増える中、ヒンヤリ感で差別化を図りたい量販店のニーズとマイクロカプセルが合致し、念願の採用につながった。
コロナ禍に大活躍したワケとは
もう一つの追い風となったのは、新型コロナウイルスによるパンデミックである。コロナワクチンを冷蔵したまま接種会場に運ぶ際、一般的な保冷材では温度が低すぎてワクチンが劣化、または死滅してしまう恐れがあった。
そこでワクチン輸送に最適な2〜8度を保持できるPCM保冷材が大活躍したのだ。このワクチン輸送用保冷バッグをつくっている国内の最大手は、創業1932年のスギヤマゲンという中小企業だ。感染対策関連商品で知られる同社はガラス投薬瓶や医療器にルーツをもち、現在は医療・バイオ研究向けの保冷・保温容器を開発している。
最近、急にPCMが私たちの目に触れるようになったのは、こうした中小メーカーが積み重ねた工夫や努力の功績が大きいといえるだろう。その成果がネッククーラーのアイデアにつながったとようだ。
関連記事
- 小売マーケの限界突破か サツドラ、AIカメラ×広告で売上が1.6倍に
北海道内で2位の店舗数を誇るサッポロドラッグストアは、新しい店舗体験の構築に乗り出した。AIカメラでの取得データとPOSデータを掛け合わせた広告を展開している、新しいチャレンジを取材した。 - 時価総額は2兆円 医療IT「エムスリー」の圧倒的なビジネスモデルに迫る
医療ITベンチャーとして存在感を示す「M3(エムスリー)」の圧倒的なビジネスモデルを紹介。同社の今後の成長についても勝手に考察していきます。 - 時価総額1兆超え 伝説のIT企業「モノタロウ」のすごいビジネスモデルを解説
一時期は楽天の時価総額を上回っていたB2BのIT企業「モノタロウ」をご存じでしょうか? 隠れ優良企業のすごいビジネスモデルを分析していきましょう。 - 広告が流れる「個室トイレ」が増えてきた 伸びしろ十分だが、まだ課題も
じわじわと「電子広告」を設置するトイレが増えてきている。個室トイレという情報の空白地帯を狙った情報発信だ。伸びしろ十分だが、まだまだ課題もあるようで…… - なぜ人は「ゼルダの伝説」にハマるのか? マリオのユーザー体験と比較して分かったこと
5月12日に発売された「ゼルダの伝説」の最新作が、発売たった3日で世界販売本数1000万本を突破した。30年以上も愛されるゲームの魅力とはなにか? なぜ人は「ゼルダの伝説」にハマるのか? ユーザー体験(UX)の観点からひも解いていく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.