顧客は自社の課題を「分かっていない」 営業は何を、どう提案すべきか?:ハイパフォーマンス営業の頭の中(2/3 ページ)
顧客は意外と自社の課題をしっかり把握していません。技術の進化に伴い、取り組める課題が多様化したことが背景にあります。そんな時代において、営業は「何を」「どう」提案すべきでしょうか?
自社の課題が分からない顧客、営業はまず何をすべき?
前回も述べた通り、仮説とは「答えが分からないことに対して既存の知識や情報をもとに仮の答えを洞察し、その答えが正しいのかを検証していく手法」です。
仮の答えを出すにあたって、まずは問いを明確にして顧客と認識をあわせる必要があります。そのために最初に行うことは顧客のゴール、目的を考えることです。
営業が会社から与えられているミッションは、多くの場合売り上げを伸ばすことです。一方、顧客は何かしらの便益があるから商品を購入します。あなたの目的である売り上げ向上をゴールとしてそのまま提案を進めてしまうと、顧客との目的の差異から論点がズレて話がかみ合いません。
顧客は「導入後に自社でどのくらいの改善効果が見込めるのか」「導入に失敗しないためにはどのようにプロジェクトを進めていけばいいのか」に興味を持っているのに、その話をする前に「今月中なら特別価格で導入できます」という話をしても顧客は不信感を募らせるだけです。
しっかり検討して費用対効果が高いという確証を得たい顧客と、出来るだけ早く売り上げを立てたいあなたは利益相反の関係になり、目的が対立してしまいます。このような関係にならないためには、まずは顧客と目指すゴールを一致させる必要があります。
もちろん営業である以上売り上げを伸ばすことは大切ですが、それは顧客に価値を提供した対価として得られるものです。売り上げを第一に考えていては顧客と目的を一致させることはできません。
私が営業として駆け出しだったキーエンス時代、先輩から顧客の「パーチェスポイント(購買理由)は何か?」とよく聞かれました。セールスポイントは「自社のセンサは業界最高の精度を持っている」という自社の強みなのに対して、パーチェスポイントは「このセンサは業界最高の精度を持っているので、不良品の発生率が20%減り、材料の廃棄を100万円分減らせる」という顧客目線でのメリットです。このようなパーチェスポイントの認識を合わせるためには顧客と目的が一致していなければなりません。
ゴール、目的を考える際に意識しないといけないのが、その解像度です。
例えば、多くの企業が「利益を上げる」という目的を達成するためにさまざまな施策を検討します。しかし、そもそも利益を上げるための施策を考えるには「なぜ利益が上がらないのか?」の理由を分解していく必要があります。
利益が上がらない理由は「売り上げが伸びていない」「支出が減っていない」の2つに分解できます。さらに「売り上げが伸びていない」は「新規顧客を獲得できていない」「既存顧客から追加のリピートがもらえていない」と分解したり、「商品Aの売り上げ」「商品Bの売り上げ」「商品Cの売り上げ」と切り口を変えたりもできます。
このように分解して解像度を上げていくことで、「商品Aはリピート率が高いが初回購入が他商品より少ない」と分かれば、「マスに対して広告を配信しており、費用の割にターゲットに認知されていない」「商品は良いのにブランドイメージが良くないので刷新の必要がある」など具体的な課題仮説が浮かびやすくなってきます。
このように「なぜ?」や「結果どうなる?」と分解して解像度を上げていくことで仮説を立てやすくなります。
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