オワコンと呼ばれた映画館ビジネスは、なぜ復活を遂げることができたのか(3/3 ページ)
今年は興行収入100億円超えの作品が複数登場。それとともに「映画館」が存在感を再び高めている。コロナ禍では「オワコン」などと呼ばれていたが、いかにして存在意義を取り戻したのか考察する。
アーティストのライブを疑似体験できる映画もヒット
また、直近では、BE:FIRSTが公開したドキュメンタリー映画『BE:the ONE』が、上映館数が114館と、他の映画の3分の1程度にもかかわらず公開初週で興行収入ランキングの9位に入り、公開2週間で興行収入3億円を突破して大ヒット御礼イベントを開催していたのが印象的です。
(参考記事:ボーイズグループ「BE:FIRST」がドキュメンタリー映画大ヒットに感謝、SKY―HIは「しゃべっていて泣きそうです」)
BE:FIRSTのようなアーティストのライブチケットは、プラチナチケットと化して入手するのが困難になりがちですが、映画であればチケットが入手しやすい割に、実際のライブに近い大音量でライブを疑似体験することが可能です。
こうしたトレンドは日本だけのものではなく、テイラー・スウィフトが10月に公開予定のツアー映画は220億円以上の興行収入になる可能性が高いと期待されているそうです。
(参考記事:テイラー・スウィフトの「ツアー映画」が興収220億円突破予測)
アーティストからすれば、映画を通じて、ライブチケットを手に入れられなかったファンや、ライブ会場が遠いファンにもライブに近い体験を提供することができます。それをきっかけに本物のライブに来たくなるファンも増えるはずですし、大きなメリットがあるといえるでしょう。
リアルな「体験」ができる映画がリピートされる
そう考えると、映画『THE FIRST SLAM DUNK』も、実際のバスケの試合を観戦しているような「疑似体験」ができるスポーツ映画になっていましたし、映画『スーパーマリオ』も観客がゲームをプレイしたり、ゲーム実況を視聴したりしているような「疑似体験」ができる映画になっていました。
昨年興行収入137億円超えの大ヒットとなった『トップガン マーヴェリック』も、実際の戦闘機を使って撮影したリアルな映像になっており、パイロットの飛行体験を「疑似体験」できる映画だったと言えると思います。
(参考記事:「トップガン マーヴェリック」がトム様日本歴代興収1位に)
ある意味、映画館がテーマパークのアトラクションのような位置づけになってきていると言えるかもしれません。
こうした映画館でなければ「体験」できない視聴経験を提供できる映画には、何度も足を運ぶリピーターが生まれやすいわけです。
一方で、ストーリー重視の映画が苦戦するようになっているのは間違いありませんし、映画業界の関係者に話を聞くと、大ヒットの映画は大きく伸びるようになっている一方で、中堅の映画がなかなか多くの映画館で上映してもらえる機会が得られにくくなっているという問題もあるようです。
ただ、若い世代に話を聞いても、今でも映画は特別な体験として足を運ぶ人が多いようです。
コロナ禍においては「オワコン」と心配された映画館ビジネスですが、映画館ならではの「体験」を提供する場所として、これからも私たちを楽しませてくれそうです。
関連記事
- 『VIVANT』の成功で考える、日本のテレビドラマが勝ち残る道
TBSのテレビドラマ『VIVANT』が、放送終了後、1週間がすぎた現在も注目され続けている。同作品のヒットからはSNSでの情報発信など地上波のテレビドラマならではの勝ち筋を学ぶことができる。 - 2週間で2億8000万時間 『ONE PIECE』の世界展開を成功させたNetflixの凄さ
Netflixが8月31日に公開した実写版『ONE PIECE』。公開以降、2週間で2億8000万時間を超える視聴時間を記録している。世界展開を成功させたNetflixの凄さとは。 - 大絶賛の世界1位スタート 実写版『ワンピース』が日本のマンガの世界への扉を開く
実写版『ONE PIECE』がNetflixで公開され、米国の映画批評サイトでは一般視聴者のレビューの平均スコアが95%という高スコアを記録するなど世界中で大きな注目を集めている。この事例から分かる日本のマンガの可能性を考察する。 - YOASOBI「アイドル」国際チャート1位の快挙に学ぶ、日本の音楽が世界で勝つ方法
YOASOBI「アイドル」がリリース後、国内のビルボードジャパンのチャートで8週連続で首位を獲得。2位以下に大きな差をつけてトップを独走している。日本の音楽が世界で勝つ方法を考察する。 - 映画『スーパーマリオ』の大ヒットが予感させるゲーム映画の黄金時代
映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の大ヒットが続いている。この作品は単なるヒット映画の一つとしてではなく、ゲーム映画の黄金時代の扉を開いた映画として歴史に名を残す可能性が高い。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.