外資の営業は10年前からAI活用 なぜ日本企業の多くはいまだに「蚊帳の外」なのか:元・外資営業役員が語る(1/4 ページ)
外資企業では、10年以上前から営業活動において簡単な業務であればAIを活用してきた。なぜ日本企業ではいまだにAI活用が進まないのだろうか? 元SAPジャパンの営業役員に日本の課題とポテンシャルを聞いた。
連載1〜3回でAIを営業組織に組み込むハードルと導入までのアウトラインを解説してきたが、実際AI×セールステック先進国である米国やドイツではどこまで進んでいるのか。また、どのような効果が出ているのか、日本企業はなにを参考にすべきなのか。
元SAPジャパンのバイスプレジデントで、現在富士通SVP Japanリージョン オファリングセールス本部長の小松新太郎氏とグーグルジャパンで営業統括部長、freeeで営業統括役員を歴任したMagic Moment代表 村尾祐弥氏が解説します。
外資の営業組織の多くは即AI活用できる、なぜ日本はできないのか?
村尾: 小松さんはOracleをはじめSAPジャパンのバイスプレジデント、キリバ・ジャパンの社長を経て現在富士通にいらっしゃいますが、キャリアの大半を外資営業のマネジメントに携わってきましたよね。わたしもグーグルジャパンで営業統括部長をしていたこともあり、今でも当時のメンバーと話す機会が多いのですが、少なくとも10年ほど前にはAIによる簡単な業務自動化は存在していたように思います。実際現在の外資企業はどこまでAI活用が進んでいるのでしょう。
小松: もちろん一概には言えませんが、皆さんが知っているような外資系企業ではすでに活用事例が出てきています。実際、雑務的なものは全て標準化してAIで自動化していたり、AIが次のアクションをレコメンドしたりすることで、経験の少ない新人営業からのアプローチも反応率が担保されるなど、実用化が一般的になりつつある領域もあると思います。
これらの企業に共通するのは、同じ物差しで物事を判断するために組織内に単一の「全世界共通の基盤」があることです。CRMなどの活用によって、AIに学習させるためのデータがすでに準備できている状態です。
一方、日本ではCRMを導入していても、ほとんど活用されていないケースが多いですよね。契約取得後の手続きのためのオーダリングツール止まりで、営業活動の川上から川下までのデータを蓄積して活用するといったことはできていない印象です。 AI活用は案件発生からクローズ、またそれ以降の経緯が正しくデータとして取得できていることが大前提です。それがあって初めて、AIがデータをもとに思考したりレコメンドを出したりできるわけです。
富士通株式会社 SVP Japanリージョン オファリングセールス本部長 小松 新太郎氏。大学卒業後、IT企業で営業としてのキャリアをスタート。その後30年にわたり、大手企業向けの基幹系システム、業績管理システム、ビジネスインテリジェンスやビジネスアナリシス、DWH(データウェアハウス)の営業に従事。営業のマネジメントは25年以上。2003年に Hyperion Solution に入社し、営業責任者として業績向上を実現。07年米国本社の Oracle Corporate による買収を経て日本オラクルに入社、Hyperion事業とOracle BI事業を牽引。10年にSAPジャパンのバイスプレジデントとして入社、Business Objects 事業の営業統括をはじめ、プロセス産業、製造機械産業、新規開拓部門の責任者を歴任し、同社の業績向上に貢献。18年にクラウド型財務管理ソリューションを提供するキリバ・ジャパンの社長に就任。21年9月から現職
関連記事
- キーエンスの営業は「何が」すごいのか? 営業利益率54%超を支える2つの特徴
キーエンスは2023年3月期の決算で営業利益54.1%を記録し、2年連続で過去最高を更新しました。驚異の利益率を誇るキーエンスの営業組織の強さを読み解いていきます。 - 米国で「営業マネジャー不要論」が話題 AIが代替できない「営業の仕事」はあるのか
「営業職はAIに代替されるのか」というテーマは、日本のみならず世界中で話題になっており、米国では「営業マネジャー不要論」が持ち上がっています。なぜ米国ではそのような議論に発展したのでしょうか? そのワケと日本企業への影響を解説していきます。 - 大手総合商社の営業は「何が」すごいのか? 強い組織であり続ける「3つの特徴」
インターネットの発達に伴い企業間の直接取引が容易になったことで、一時期に商社の存在価値が低下しました。しかし、そのような状況下でも売り上げを伸ばした商社はありました。彼らの営業組織はなぜ強いのか、その秘密を探ってみましょう。 - グーグル出身「営業のプロ」が解説 組織力を上げる“3つの会議”
営業組織内で十分な成果を出せていないメンバーを育成するためには何が必要でしょうか? 営業の組織力を向上させるための「3つの会議」の重要性を紹介します。 - 「営業から買う」は時代遅れ B2Bテック製品の購買ジャーニー、どう変化している?
B2B営業の購買ジャーニーが変化してきている。これまで当たり前だった「営業から買う」というスタイルはすでに時代遅れになりつつある。なぜだろうか? 購買者の変化を踏まえ、今後の営業のあり方を考えてみよう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.