外資の営業は10年前からAI活用 なぜ日本企業の多くはいまだに「蚊帳の外」なのか:元・外資営業役員が語る(4/4 ページ)
外資企業では、10年以上前から営業活動において簡単な業務であればAIを活用してきた。なぜ日本企業ではいまだにAI活用が進まないのだろうか? 元SAPジャパンの営業役員に日本の課題とポテンシャルを聞いた。
AI活用、日本企業に勝機はあるのか?
村尾: 今後生成AIは営業の領域に限らずバーティカルで進化し、グローバルではAIを活用することで大きく成長する企業も現れるでしょう。日本はDXの推進を背景にテクノロジーを活用する企業は増えている一方、AIを営業組織に取り組むための下地づくりはこれからと認識していますが、今後の活用可能性はどのようにお考えでしょうか。
小松: AIや自動化を活用するチャンスは、全ての日本企業においてあります。労働人口が減少する日本では人材採用が難しくなっていきますが、実は人手が少ないほどチャンスです。競争差別化に寄与しない定型、反復業務は自動化を前提にすることで、競争力を上げた・コスト削減につながった成果事例が出来れば、企業規模にかかわらず横展開が実現していくと思います。
AI、自動化の恩恵を最も多く受けられる可能性があるのは大都市圏ではなく労働人口、市場がある程度、限定されている地方の中堅、中小企業かもしれません。
村尾: 現段階では営業組織にAIを実装し、マネジメントや業務を自動化することに関しては海外勢に軍配が上がっている印象がありますが、ここから2〜3年以内に日本でも営業組織にAIが実装されれば、まだ世界で勝機があると考えています。というのも、AI活用が進めば必ずコモディティ化が始まります。その時に何が差を作るかというと「人にしかできないこと」なんですよね。
日本では長い間、相手との関係値をサステナブルにつくる営業スタイルを得意としてきました。人が介入する領域としてどこを残すのか、それぞれの場面で各営業が何を伝えるのか・アクションするのかを判断するのは、これまでの日本式営業を生かせる最強の変数であり、武器だと考えています。
小松: おっしゃる通り、顧客との合意以降の契約書作成・送付といったプロセスとしての営業活動は、割と標準化しやすいですよね。自動記録もできますし、データドリブンが進む領域だと思います。わたしは営業には2つの「カガク」の融合が必要だと考えています。1つは「科学」。AIを活用した顧客のプロファイリング、商談状況分析や次のアクション設定などはデータドリブンなサイエンスの領域だと思います。もう1つは「化学」です。契約を取るまでの顧客との交渉は一律ではありません。誰にどんな話をするとどういった反応で、その人が反応するから周りに影響を与えていくといった「化学反応」によって商談は成功に向かっていきます。
わたしは特に営業における「化学」に人の関与が残り続ける領域だと思っています。データの蓄積を粛々と進めるのと並行して、顧客との関係値を作ることのできる強みを磨き上げていくことが、AI時代に勝てる組織を作ることにつながっていくのではないでしょうか。
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