「ほぼ日手帳」ヒット支えた“糸井重里流”チーム作り “リコール”の危機を販促につなげた独自手法:苦難の連続(1/2 ページ)
年間82万部を売り上げ、累計販売部数は1000万部を超えた「ほぼ日手帳」。その誕生の背景にはさまざまな苦難があった。ほぼ日代表取締役社長の糸井重里さんと、取締役の小泉絢子さんに聞く。
ロールプレイングゲーム「MOTHER」シリーズの生みの親として知られる、コピーライターの糸井重里さん。糸井さんが代表取締役社長を務める株式会社ほぼ日(東京都千代田区)による「ほぼ日手帳」が今、年間82万部を売り上げ、累計販売部数は1000万部を超えている。
「ほぼ日手帳」の発売は2001年10月と、手帳業界でも後発の部類だ。しかし「1日1ページ」という作りや独自の手帳カバーなど、他の手帳と一線を画す機能により、またたく間に業界内のニッチな需要を獲得した。その独自性からか、手帳機能がデジタルへの移行が進む最近でも、前年比30 .3%増という過去最高収益を出し続けている(23年8月期 第3四半期 決算説明資料より)。海外では特に北中米で67.5%増、欧州で104.5%増と、人気が高まっているという。
だが、その誕生の背景にはさまざまな苦難があった。まず、それまで通販しかしてこなかったほぼ日にとって、いかに一般流通に乗せるかも課題だった。他にも販売初年から不良があるとの指摘から手帳を手作業で再出荷したり、工場が火災に遭ったりするなどの憂き目にも遭ったという。
そんな「ほぼ日手帳」がなぜ、累計販売1000万部という売り上げを挙げ、独自の地位を確立できたのか。第1回【糸井重里に聞く「ほぼ日手帳」売上30%増のワケ デジタル時代なのになぜ?】に引き続き、ほぼ日代表取締役社長の糸井重里さんと、取締役の小泉絢子さんに聞いた。
糸井重里(いとい・しげさと)株式会社ほぼ日 代表取締役社長。1948年生まれ、群馬県出身。コピーライターとして一世を風靡し、作詞や文筆、ゲーム制作などでも活躍。98年に毎日更新のWebサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」創刊。『ほぼ日手帳』をはじめ、AR地球儀『ほぼ日のアースボール』、「人に会おう、話を聞こう。」をテーマにアプリ・Webでお届けする『ほぼ日の學校』など多様なコンテンツの企画開発を手掛ける(以下、糸井社長と小泉取締役の撮影は斉藤順子)
小泉絢子(こいずみ・あやこ)株式会社ほぼ日 取締役。学生時代からアルバイトでほぼ日に勤務した後、2001年4月に入社。01年に発売したほぼ日のロングセラー商品「ほぼ日手帳」を、立ち上げから担当する。08年11月に事業支援部長に就任した後、12年12月に商品事業部長に就任。13年6月に取締役に就任
「ほぼ日手帳」の売り上げを拡大させた“秘策”とは?
関連記事
- 糸井重里74歳、ほぼ日は「僕の最高の作品」 創業した会社をどう残していきたいか?
キャッチコピーからゲーム、メディアから手帳まで多様な作品を生み出してきた糸井重里さんが「最高の作品」と評するもの。それが会社としてのほぼ日だ。「経営者・糸井重里」とは一体どんな人物なのか。糸井さんと、ほぼ日取締役の小泉絢子さんに聞いた。 - 糸井重里の「ほぼ日」会社経営論 社員を飽きさせないことで生まれる「偽りの絆」
糸井重里さんが社長を務める「ほぼ日」。同社は、社内のエリート人材を稼ぎ頭の手帳部門に回すという人事配置をしていない。一人でも多くの社員に活躍の場を与えることを考え、柔軟なチーム体制を構築していることが特徴だ。その真意を聞いた。 - 糸井重里に聞く「ほぼ日手帳」売上30%増のワケ デジタル時代なのになぜ?
年間82万部を売り上げ、累計販売部数が1000万部を超えた「ほぼ日手帳」。デジタル時代なのに売上30%増の理由は? ほぼ日代表取締役社長の糸井重里さんと、取締役の小泉絢子さんに聞いた。 - 本田宗一郎が「すぐにやれ」と命じたこと ホンダ倉石誠司会長に聞く
本田宗一郎が、ソニーを創業した井深大に誘われて見に行き、『これこそホンダがやるべきことじゃないか。すぐにやれ』と本社に電話して設立されたのがホンダ太陽だ。本田宗一郎は技術で人を喜ばせて、技術で人の生活の可能性を広げることがホンダのやることだと言ってきた。本田技研工業の倉石誠司取締役会長に「多様性こそがホンダのDNA」だと語る真意を聞いた - 部下に気を遣いすぎて疲れる上司 「心理的安全性の意味」を誤解している?
最近の職場でよく見られる心理的安全性への誤解の例を挙げながら、本当の意味での心理的安全性につながる職場でのコミュニケーションを紹介します。 - 「希望退職を募集することになったら、私はJALを辞めます」 日本航空・菊山英樹専務
コロナ禍による国際、国内の旅客数減少が長期化して日本航空(JAL)は苦しい経営が続いている。経営破綻後に当時の稲盛和夫会長(現在は名誉顧問)から経営のやり方を巡って叱責された経験がある菊山英樹専務にインタビューした。 - 味の素CEOが語る「ピラミッド型のイエッサー文化」から脱却する組織論
人的資本経営に、企業はどう対応をすればいいのか。味の素CEOに人材や技術、顧客などの無形資産が経営にとって重要な役割を果たす理由を聞いた。 - 10年の海外赴任で業績をV字回復 味の素CEOが人材投資に力を注ぐ理由
味の素、藤江太郎CEOの豊富な海外経験から人材投資の重要性、持ち株を支給した狙いに迫る。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.