セールステックを導入したのに逆に生産性が低下、なぜ? 実態と対策を解説:営業DXへの心理学的アプローチ(前編)(1/3 ページ)
営業現場では「セールステックを導入したのに、逆に生産性が下がっている」という声をよく聞きます。なぜそのような事態が起こるのか、そのワケを読み解き、心理学的アプローチを考えてみましょう。
ここ数年「営業DX」などに象徴されるように、AIやデジタルテクノロジーを活用した業務変革への取り組みや、営業組織(広義では、マーケティングやコンタクトセンター、カスタマーサクセスなどを含む顧客接点全体)の見直しが注目を集めています。
しかしながら、従来こうした取り組みを成功裏に進められたケースは必ずしも多くありません。なぜ、失敗に終わってしまうのでしょうか。
本連載では、営業DXが現場で成功していないワケを読み解くとともに、心理学の観点から現場に営業DXを浸透させる方法を解説します。
営業職、20年で140万人減 営業DXで食い止められるか?
2020年1月から長きにわたり、世界中に大きな影響を与えてきたパンデミックの影響がようやく終息したのもつかの間、円安や原材料高騰などさまざまな要素が経営にさらなるインパクトを与え始めています。
そのような中においても、前年度(2023年3月期)の各社決算報告によれば、多くの企業が過去最高の営業益を報告し、好景気にあるようにも見えます。さらに、29年ぶりに3%超となる賃上げを行うなど、未曾有(みぞう)のパンデミックを経験した日本はそれを乗り越え好転しているようにも見えます。
しかしながら、物価上昇を考慮した実質賃金は、前年比較の推移で見てもパンデミック以降、大きく下がり続けています。株価推移(ドル建て・週足)を見ても、回復傾向にあるとはいえ、パンデミック禍であった21年4月と比較しても23年6月末時点でまだまだ低水準な状況にありました。
さらに、日銀短観の大企業(製造業)における仕入れ価格と販売価格のDI(指数)を20年6月と23年6月で趨勢を比較すると、いずれも上昇が一段落しているところはあるものの、今後、価格転嫁の方向に流れることを考えると、販売の最前線にいる営業はこれまで以上に厳しい戦いを強いられることになるのではないでしょうか。
経営者にとっては「売り上げ・シェア拡大」は、常に重要な経営課題である(図1左)一方で、それを実現するはずの営業(販売従事者)は、01年をピークにこの約20年間で140万人も減少しています。日本国内での労働人口が約4%上昇している一方で、販売従事者は12.4%も減少するという状況にあります(図1右)。
営業を辞めたくなった理由としては「給料が安い」「長時間労働」「モチベーション維持」がトップ3に挙げられました。ここから、営業が抱える課題=売り上げ・シェア拡大という経営課題を解くカギは、営業の「生産性向上」と「報酬体系」の見直しであることが見えてきます。
ここからは、営業生産性向上に焦点を当て、デジタルテクノロジーの活用&定着化のための方法を行動経済学の観点から解説をしていきます。
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