セールステックを導入したのに逆に生産性が低下、なぜ? 実態と対策を解説:営業DXへの心理学的アプローチ(前編)(2/3 ページ)
営業現場では「セールステックを導入したのに、逆に生産性が下がっている」という声をよく聞きます。なぜそのような事態が起こるのか、そのワケを読み解き、心理学的アプローチを考えてみましょう。
生産性向上が進まない セールステック導入プロセスに落とし穴
営業生産性を向上させるために導入が検討されるセールステック(SFAやCRMなどの営業支援ツール)ですが、必ずしも導入に成功しているとは言い難いようです。
アステリアが公開したホワイトペーパーによると、セールステックを導入している企業の83%が「営業活動において課題が残っている」「課題解決に至らなかった」と回答しているようです。
この「課題解決に至らなかったと」いう回答結果は各種あります。各社の調査からは、ツール導入のせいで営業担当者がシステムへの入力に多くの時間を要し、顧客と向き合うべき時間を創出できていない実態が共通して読み取れます。
本来、セールステックは営業担当者の業務をデジタル化することで生産性を向上させることを目的として導入したはずであるにもかかわらず、なぜこのような結果となっているのでしょうか。それは、導入時に大きなミス(期待値ギャップ)を犯しているからなのです。
SFAやCRMなどの導入時の目的は、商談状況や顧客情報の可視化など、マネジメント側が営業現場を管理・統制するためです。しかし現場は、SFAやCRMへのデータ記入が商談の成約率向上に結び付いている実感を持てていません。さらに「商談での成約率向上のための有効なアドバイスを上司から直接もらいたい」と考えています。マネジメント層の狙いと現場が解消したい課題がズレているため、現場はセールステックを利用する有効性を実感できずにいます。
近年では、セールスエンゲージメントという分野の研究が進んでいます。営業担当が、顧客が求めるコンテンツやデータを提供することで、ツール利用率を高める取り組みを指します(図3)。
もちろんそのためには、受注率の高いチームのマネジャーが注意してみているポイントや報告させている項目などをサクセスメソッドとして定め、入力項目を限定していくことが重要になります。
当社のあるクライアント(A社)は膨大な営業日報を毎日集めていましたが、実態としてマネジャーがそれら全てを精読してフィードバックするのは難しかったようです。その結果、図4のように報告項目を限定しました。
同社はこの方法を導入することによって、営業担当者の入力負荷を大きく削減し、受注率を30%以上改善できました。
そして最も効果があったのは営業マネジャー(チームリーダー)の生産性の向上でした。チームのマネジメント方法を自社のベストプラクティスを前提に標準化し、入力項目などを削減、アドバイスすべきポイントなどを明確にしたことにより、無駄な日報確認や同行営業が圧倒的に削減されました。さらには、ツールで管理することで担当者の入力すべき情報の精度や更新頻度が向上し、ダッシュボード情報の精度が格段に正確性を増したことで、フォーキャスト精度が大きく改善しました。
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