ユニクロが海外展開先で聞かれた衝撃の一言「わが国に何をしてくれるのですか」:20年前の原体験(2/2 ページ)
ユニクロが古着販売によって循環型ビジネスに取り組む理由は何か。背景にはファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏が20年以上前に経験した海外展開でのエピソードと、そこから得た強い思いがあった。
サステナブルに振り切ったユニクロと柳井正氏の思い
ユニクロでは「RE.UNIQLO STUDIO」や古着販売などのサービス以外でも、循環型のビジネスモデルの確立に向けた施策を打ち出している。「UNIQLO LOGO STORE」では環境に配慮した取り組みをすることで、従来よりも消費電力を40%カットする店舗を実現した。背景には柳井正氏の強い思いがあるとシェルバ氏は説明する。
「サステナビリティでビジネスをどう実現していくのかを、社内で最も唱えているのは柳井です。その必要性に早い時期から気付いていました。
ユニクロは01年の英ロンドンから海外展開を始めて、06年には米ニューヨークにグローバル旗艦店を出店しています。出店する際、ユニクロはまだ知られていなかったので、柳井が各国の要人に会って会社を説明すると『あなたの会社はわが国に何をしてくれるのですか』とよく聞かれていました。
その経験から、企業姿勢を示す取り組みを本気でやっていかなければならないと感じたようです。それで最初に始まったのが、全商品のリサイクル活動でした。正々堂々と正しいビジネスをしながら、事業の中で社会課題を解決していくことを、これまでずっと続けています」
古着の販売は海外の大手アパレル企業なども手掛け始めていて、今後広がっていくことが予想される。まだ時間はかかるが、古着プロジェクトを実現したいとシェルバ氏は言葉に力を込めた。
「循環型ビジネスを目指していくことは、会社としても大きなチャレンジです。そこを目指さなければ、資源の枯渇や環境破壊、素材価格の高騰などさまざまな問題が山積する中で、企業としての存続自体が危ぶまれます。
今回の古着プロジェクトは、自社で調達したものを自社の中で循環させていくビジネスモデルです。このビジネスモデルを作って業界をリードしていきたいですし、お客さまにも賛同していただきたい。実現に向けて今後も注力していきます」
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