利用されない指定席券売機 やっぱり「駅の窓口廃止」は間違っている:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/6 ページ)
インターネット予約のおかげで、新幹線の移動はとても便利になった。交通系ICカードと予約情報をひも付ければきっぷは不要。しかし便利なのは移動が新幹線で完結する場合だけで、在来線を乗り継いだり、一筆書き経路では窓口がないとお手上げだ。ところがその窓口が激減している。
キャンセル手続きが想像以上の煩雑さだった
私はネット予約を利用しているほうだと思う。在来線にまたがるきっぷは「えきねっと」などで予約して、指定席券売機で受け取る。これがなかなか面倒だ。まず、私はJR沿線ではなく、東京郊外の大手私鉄沿線に住んでいる。JRのきっぷを受け取るためには、最も近い指定席券売機まで私鉄に乗って最寄りのJR駅に行く必要がある。たいていは都内へ出掛けた際にJR駅に立ち寄る。
それでも私は今まで、窓口の減少や指定席券売機の移行に異議はなかった。これがおかしいと思い直した理由はキャンセル時の扱いだ。
今年の2月、私と友人は東京から郡山経由で只見線(福島県会津若松駅から新潟県小出駅)の雪の旅を企画した。在来線が含まれるし、友人も同行するから、私がネットで予約してきっぷを発券した。往路の乗車券、往路の新幹線特急券、復路の乗車券、復路の新幹線特急券、帰路は会津若松から観光列車「フルーティアふくしま」に乗ることとし、その指定席券。1人だけで5枚、2人で10枚のきっぷが手元にある。
ところが私の都合がつかず、当日朝にキャンセルすることになった。きっぷを払い戻したい。新幹線の発車時刻前に手続きしたい。そのとき最も近いJR駅の「話せる券売機」に行った。並んでいない。さっそく操作しようとオペレーター「呼び出し」を押すと、「ただいまの待ち人数10人」と表示された。そのまま10分ほど待たされた。私の後ろに定期券を買おうとするお客様が2人並んだ。窓口の行列ならまだしも、券売機の前で何も操作せずに待つという仕草は居心地が悪い。
みどりの窓口のキャンセル手続きなら、係員がきっぷを受け取って、端末機に次々にきっぷを挿入して、仕上げに購入時のクレジットカードを読み取らせて終了だ。1分ほどだろう。「話せる指定席券売機」もそうなるものだと思っていた。
しかしオペレーターにきっぷの払い戻しを伝えると、書見台にきっぷを並べろといわれた。まず目視で確認してからのようだ。ところが書見台にはきっぷ9枚分しか並べられない。9枚を確認し取り除き、残り1枚を書見台に載せて確認してもらって、改めて指示があり「話せる指定席券売機」に挿入する。
誰も並んでいない「話せる指定席券売機」の前で10人待ち、さらに手続きで約10分かかる。私の期待値として、誰も並んでいない窓口だったら3分で終わるところが20分かかった。この間、もちろん立ちっぱなしだ。私はがっかりした。こんなことなら、この旅は始めから自動車で行けば良かったと思ってしまう。こういうやりとりは私だけだろうか。
関連記事
- 次の「新幹線」はどこか 計画をまとめると“本命”が見えてきた?
西九州新幹線開業、北陸新幹線敦賀延伸の開業時期が近づいている。そこで今回は、新幹線基本計画路線の現在の動きをまとめてみた。新幹線の構想は各県にあるが、計画は「建設を開始すべき新幹線鉄道の路線を定める基本計画」として告示されている。これと費用便益比、各地のロビー活動の現状などから、今後を占ってみたい。 - なぜ駅名に「新」が付くの? 新横浜、新大阪、新神戸など
新幹線だけでなく、在来線や私鉄にも「新」が付く駅名は多い。中には意外な場所にも新が付く駅はある。なぜそれらの駅には新が付くのか。 - 年末年始、なぜ「のぞみ」を全席指定にするのか 増収より大切な意味
JR東海とJR西日本が、ゴールデンウィーク、お盆休み、年末年始の3大ピーク時に「のぞみ」を全列車指定席にすると発表した。利用者には実質的な値上げだが、JR3社は減収かもしれない。なぜこうなったのか。営業戦略上の意味について考察する。 - もはや東京郊外ではない!? 関東の鉄道新線は「県都」に向かう
東京都市圏も大阪都市圏も鉄道新線計画が多く、そのほとんどが通勤路線だ。東京の周辺都市は、鉄道の発達とともに「東京通勤圏」として発展してきた。しかし近年の鉄道構想は「県都通勤圏」の充実にあるようだ。神奈川県、埼玉県、茨城県、栃木県の県都アクセス路線構想を俯瞰(ふかん)してみた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.