利用されない指定席券売機 やっぱり「駅の窓口廃止」は間違っている:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/6 ページ)
インターネット予約のおかげで、新幹線の移動はとても便利になった。交通系ICカードと予約情報をひも付ければきっぷは不要。しかし便利なのは移動が新幹線で完結する場合だけで、在来線を乗り継いだり、一筆書き経路では窓口がないとお手上げだ。ところがその窓口が激減している。
さて、乗換案内から切符を購入してみよう。この例では「高崎から山寺までの列車を発車時刻で検索して、新幹線指定席特急券、片道乗車券を購入してみましょう」とある。その下に作業項目として、「STEP1 ご希望のボタンを選びます」「STEP2 到着駅を選択します」の順に操作方法が示されて、STEP14まである。つまり14回の作業が必要だ。そもそもきっぷを買うくらいのことでマニュアルが必要になる方がおかしい。
ここで説明文を振り返ろう。「高崎から山寺までの列車を発車時刻で検索して、新幹線指定席特急券、片道乗車券を購入してみましょう」である。みどりの窓口なら、これをそのまま「高崎から山寺まで、発時刻は○時で、新幹線指定席と片道きっぷをください」というだけだ。申告と購入の2STEPだ。
さらに窓口であれば、係員が目にも止まらぬ速さで操作してくれて、その間に「席は窓側と通路側のどちらがいいですか」「最短で乗り換え時間が○分ですが、1本遅らせて○時にしますか」とか、「往復きっぷも買えますよ」などとアドバイスしてくれる。親切で知識の豊富な係員であれば「おトクなきっぷが使えますよ」などと提案してくれるかもしれない。会話が苦手という人でなければ、窓口が良いに決まっている。
最近、X(旧Twitter)のタイムラインに、係員がみどりの窓口の操作を紹介する動画が流れてきた。12年前にアップロードされたものだ。
熟練した係員が、まるでピアノを弾くように素早く画面をタッチしてきっぷを販売する。操作しながら会話もしている。いまはこれと同じ操作を指定席券売機やスマートフォンで、客に操作させようとする。これがそもそも間違っているのではないか。
しかし、こういう状況は鉄道に限らない。
最近、ファストフード店でオーダーマシンの設置が進んでいる。試しにやってみたら、複数のセットメニューを同時に買う方法がよく分からない。利用者が少ないし、面白がって何度も試して、やっと理解して注文を確定したところ、そこから決済完了まで時間がかかりすぎる。この通信はアナログモデムかISDNかと思うほどだ。異常だと思って店員を呼んで、来てもらったその時にレシートが出てきた。その間、窓口では数人が購入完了していた。このオーダーマシンを導入した意味が分からない。
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