利用されない指定席券売機 やっぱり「駅の窓口廃止」は間違っている:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/6 ページ)
インターネット予約のおかげで、新幹線の移動はとても便利になった。交通系ICカードと予約情報をひも付ければきっぷは不要。しかし便利なのは移動が新幹線で完結する場合だけで、在来線を乗り継いだり、一筆書き経路では窓口がないとお手上げだ。ところがその窓口が激減している。
煩雑すぎる操作が嫌われる原因
みどりの窓口と指定席券売機を併設している駅に行くと、みどりの窓口は長い行列ができていて、指定席券売機の前には誰もいないという風景を見かける。指定席券売機はこれほど人気がないし、もしかしたら並んでいる人たちは、指定席券売機のある駅からみどりの窓口のある駅にやってきたかもしれない。
インターネットやスマートフォンは普及したけれども、だからといって、それで指定席券の予約までできる人は少ない。では指定席券売機で、となるけれども、かなり手間がかかる。奇しくもJR東日本のサイト「指定席券売機ご利用案内 体験版」でそれが証明されている。
指定席券売機の体験版は、スライドをスクロールする紙芝居方式。ゲーム業界出身者からすると、体験版とは実際に画面をクリックして次の画面に遷移させるプログラムだが、これは違う。体験といえるだろうか?(出典:JR東日本、指定席券売機ご利用案内 体験版)
指定席券売機のメニューがすでに不親切だ。お客様の希望はまず「○○駅へ行きたい」であって、「指定席に乗りたい」「自由席が良い」はその次だ。手順が逆になっている。○○駅へ行くためにどんな列車があるかを先に想像する必要がある。まずは目的地を確定させてほしい。
例えば、あなたがこの記事ページで「ITmedia」のロゴを指さすとする。あなたは指の先端をロゴに持っていく。意識は常に指先にある。「まず肩を上げて、腕の角度を変えて、肘の関節を曲げて、手を開いて人差し指を伸ばして……」という意識はしない。これが人の動き方だ。「指定席か自由席か」という選択肢は、「肩と腕のどちらを先に動かしますか」というようなもので、最初に意識すべきことではない。
だから指定席券売機には、まず「どこに行きますか」というボタンが必要ではないか。もちろんその機能はある。右上の大きな「乗換案内から購入」だ。右下の「乗車券」も五十音順で駅の指定から作業を開始する。しかし初見は「どこに行きますか」だろう。それなら直感的に操作できる。
関連記事
- 次の「新幹線」はどこか 計画をまとめると“本命”が見えてきた?
西九州新幹線開業、北陸新幹線敦賀延伸の開業時期が近づいている。そこで今回は、新幹線基本計画路線の現在の動きをまとめてみた。新幹線の構想は各県にあるが、計画は「建設を開始すべき新幹線鉄道の路線を定める基本計画」として告示されている。これと費用便益比、各地のロビー活動の現状などから、今後を占ってみたい。 - なぜ駅名に「新」が付くの? 新横浜、新大阪、新神戸など
新幹線だけでなく、在来線や私鉄にも「新」が付く駅名は多い。中には意外な場所にも新が付く駅はある。なぜそれらの駅には新が付くのか。 - 年末年始、なぜ「のぞみ」を全席指定にするのか 増収より大切な意味
JR東海とJR西日本が、ゴールデンウィーク、お盆休み、年末年始の3大ピーク時に「のぞみ」を全列車指定席にすると発表した。利用者には実質的な値上げだが、JR3社は減収かもしれない。なぜこうなったのか。営業戦略上の意味について考察する。 - もはや東京郊外ではない!? 関東の鉄道新線は「県都」に向かう
東京都市圏も大阪都市圏も鉄道新線計画が多く、そのほとんどが通勤路線だ。東京の周辺都市は、鉄道の発達とともに「東京通勤圏」として発展してきた。しかし近年の鉄道構想は「県都通勤圏」の充実にあるようだ。神奈川県、埼玉県、茨城県、栃木県の県都アクセス路線構想を俯瞰(ふかん)してみた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.