職場で生まれる「この人、誰?」を解消 アサヒグループ“オフィス改革”の成果:ハイブリッドワークの挑戦と舞台裏(2/2 ページ)
2020年8月からリモートワークを含めた新たな働き方を模索しているアサヒグループ。グループ内の各社で個別に分かれていたオフィスを統合・シェア化するとともに、リニューアルも進めてきた。この3年間でどのような成果を得られたのだろうか。
グループ内のコミュニケーションが活発化
実際に少しずつ、成果が生まれ始めている。
会社をまたいだコミュニケーションが生まれたことで、顧客の共通する営業メンバーが共同で「アサヒフェア」として提案するなどの動きが出ているという。これまでも同様の動きはあったが、より活発化している。また、異動時期に合わせて転入してくる人を対象にした説明を兼ねた交流会などの事例も成果に挙がった。
ただ、直近ではコロナ禍が落ち着きを見せている。社会的に「オフィス回帰」の流れもあってか、アサヒグループでも出社時に会議スペースなどが不足する課題が発生した。そこで、9月にグループとしての方針を「アサヒ型ハイブリッドワーク」として再定義。20年に定めたものは在宅のテレワークを中心に据えた内容だったが、オフィスとテレワークの使い分けを念頭に置いたメッセージを発信した。
「出社により効果があがる業務やシーンを言語化し、目的を持って働く場所を選ぶようにと発信をしました。具体的には、オフィスを『そこでしか得られないような体験をする場所』で、自宅は『集中・効率化によってアウトプットを最適化する場所』と定義しました」(川端氏)
とはいえ、グループとして何かルールを課しているわけではない。現場視点を重視し、あくまで各社・各部門・各チームの裁量にゆだねて、最適な働き方を模索している最中だ。「グループとして定めたオフィスやテレワークの立ち位置も、あくまで仮説に過ぎません。これからグループ内での取り組みと議論を通して、よりブラッシュアップしていければと思います」と川端氏。
現状、オフィスと在宅の割合は4対6ほどだ。年齢や拠点による出社率の顕著な差はなく、各自が業務内容に合わせて自由に働く場所を選んでいる。
今後に向けては「さらに出社率が高まるのでは」と川端氏は話す。会議室などが不足しがちなことを受けて、23年の1年間をかけて、オンライン用のブースを中心に座席や会議室の増設に取り組んできた。今後も、サードプレースの活用ではなく、あくまで自社のオフィスの活用を念頭に、全国オフィスの相互利用を可能とする「どこでも立ち寄りオフィス」などの環境整備を進めている。
同グループは、オフィスの整備・リニューアルだけでなく、生産部門のリモート化に関する取り組みにも注力。21年下期から、国内ビール工場における遠隔監視や、飲料・食品の工場と合わせて製造ラインでARグラスの活用に関する検証も進めている。新たな働き方から、どのような商品や成果が生まれていくのか、目が離せない。
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