異質さ際立つ「カスハラ」なぜ起きる? メカニズムをひも解く:働き方の見取り図(2/4 ページ)
脅威として受け止められるようになってきたカスハラ。そのメカニズムをひも解くと、多分に異質な面があることが見えてくる。カスハラは他のハラスメントとどう違い、どんな特徴があるのか――。
カスハラとパワハラの共通点とは?
行われたハラスメントの内容が「性的な言動」であった場合はセクハラに該当しますが、加害者が「顧客等」であれば、セクハラでもカスハラでもあることになります。
また、行われたハラスメントがどんな内容でも「優越的な関係を背景とした言動」ならばパワハラになります。内容が「性的な言動」であれば、パワハラでありセクハラです。そして加害者が「顧客等」であれば、パワハラでありカスハラであるとも言えます。
ただ、カスハラの前提には、顧客は“お客さま”であり、上の立場と見るというスタンスがあります。カスハラ被害者が無理難題や横暴な振る舞いを受け止めようと努めるのは、相手が優位な立場にいる“お客さま”だからです。カスハラとパワハラは、加害者が「顧客等」に該当するかどうかが異なるだけで、「優越的な関係を背景とした言動」が引き起こしている点で常に共通しています。
通常、パワハラは同じ職場の中で行われる嫌がらせに対して使われる言葉ですが、「優越的な関係を背景とした言動」が引き起こしているという共通点に目を向けると、カスハラとはパワハラの一種であり顧客によるパワハラだ、と言ってもよいのかもしれません。
また、カスハラとパワハラは被害者が同時に加害者にもなり得る点においても似ています。例えば、部長が社長から優越的な関係を背景とした嫌がらせを受けた場合は、社長がパワハラの加害者で、部長は被害者です。
しかし、パワハラの被害者である部長が、今度は部下である課長に対して優越的な関係を背景とした嫌がらせをしてパワハラの加害者になることもあり得ます。特に、上司からの命令には絶対服従するような強圧的ストロングマネジメントが染みついている会社組織では、そのようにパワハラの被害者が、部下に対してはパワハラの加害者になっているということが往々にして起り得ます。
カスハラの場合も顧客から被害を受けた従業員が、今度は自分が買い物客となった時、店員に対してハラスメントすることが起り得ます。他の人に向けて復讐する“リベンジカスハラ”の加害者と化して、溜めたストレスを吐き出すという具合です。
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