みなし残業制、どうせなら「毎日定時」で帰りたい ダメですか?(2/3 ページ)
多くの企業が取り入れている「みなし残業制」(=固定残業制)。「どうせ残業代が含まれているのなら、何とかして仕事を終わらせて、毎日定時に帰りたいよね」と考えるビジネスパーソンも多いのではないだろうか?
みなし残業制はブラックな制度?
みなし残業制について「ブラックな制度だ」という印象を持つ人は少なくありません。それはなぜなのでしょうか?
まず、求人票などで給与額をぱっと見た際に、みなし残業代も合計した給与額が目に入ってしまい、給与が高いように錯覚しやすいことがあります。そうして実際に入社をしてみたら、毎月みなし残業時間の目いっぱいまで働かなければ仕事が終わらないことに気付き、「時間単価で考えたら、割が悪いな」と感じてしまいがちです。
「求人票には『残業時間は月平均で〇時間』と書かれていたが、実際入社後に配属された部署が忙しく、平均よりも長く残業をすることになったのに、それでも給与は変わらない」――何だか損をした気分になることも考えられます。
他には、会社側がみなし残業制の制度についてちゃんと理解しておらず、法違反をしているケースがあります。
(1)残業に対しては、通常の賃金に25%割増をして支給する必要があり、それも含めてみなし残業代の金額を算出しなければならないにも関わらず、正しく金額を算出できていないケース。(2)みなし残業時間を超えて労働しているのに、超えた部分に対しての残業代を支給していない。つまり「みなし残業制だから、いくら残業させても常に一定の給与を払っておけば良い」と誤解をしているケース――これは明らかに賃金の未払いであり、違法となります。こういった会社は少なくありません。
また、基本給部分がいくらで、みなし残業代部分がいくらなのか、内訳が良く分からない雇用契約書の書き方をしていたり、実は基本給の中にみなし残業代が内包されていた、なんて話を後からしてきたりする会社もあります。
みなし残業制を採用するのであれば、基本給の額とみなし残業代の額が明確に区別できる形で従業員に示さないといけないと決められていますので、これらの取り扱いは違法です。みなし残業制の会社で勤めている人は、自身の雇用契約書や給与明細をいま一度確認してみましょう。
みなし残業制を導入する企業のメリット
ところで、なぜ企業はわざわざこの制度を採用するのでしょうか?
大きな理由として、給与計算作業が簡素化されるというメリットがあります。みなしとして定められた残業時間数を超えるまでは追加で給与を支給する必要がないため、残業時間に係る給与の変動が少なくなるからです。
つまり、みなしの残業時間を越えて働く従業員がいない場合、個別の従業員ごとに残業時間に対する給与を計算する必要がないため、給与計算の作業を効率的に行えるのです。実際、多くの企業では、みなし残業時間数を設定する際に、一般的な従業員がみなし残業時間数の範囲内で働くよう考慮して設定を行っています。
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