生成AIで企業はどう変わるのか オラクル「NetSuite」が提唱する新時代のERP:社長が力説(2/2 ページ)
日本オラクルが生成AIの活用に本腰を入れる。主に中小企業向けに展開するクラウドソフト「Oracle NetSuite」全体に生成AIを組み込み、生産性向上の支援に注力する。
中小企業こそERPが必要な理由
こうした中小企業にこそ、ERPが必要だという。日本では2007年ごろからSaaS(Software as a Service)の導入が始まり、クラウド化が進んできた。今では企業でのパブリッククラウドの利用は定着しているものの、中小企業におけるデジタル化やクラウド導入が遅れているという声もある。
だが、近年はこうした事情も変わってきているという。渋谷CMは「過去1年間で、パブリックカンパニーや金融、保険会社がクラウドの利点を認識してきています。現在では製造業、卸売業がオンプレミス(自社管理するシステム)からクラウドに移行すると推定しています」と話す。
「ITR Market View:ERP市場2023」によれば、ERP市場の売上高は上昇を続けている。20年度は新型コロナウイルスの感染拡大により伸び悩んだものの、21年度には各種の法改正や、老朽化したERPシステムの刷新などにより2桁成長を回復し、昨年対比16%増の1467億円となった。22年度は同約12%増の1645億円、23年は同約13%増の1850億円の売り上げを見込んでおり、堅調な動きが続く。ERP投資の増加傾向は当面続く見込みだ。
「このようにSaaSのERPが、大きく拡大すると予測されています。これから日本で、世界ナンバーワンのクラウドERPである『NetSuite』の強みが、まさに発揮されるタイミングだと考えています」(渋谷CM)
NetSuiteへのAIの導入にあたっては、カナダの生成AIスタートアップの「コヒア(Cohere)」の技術を活用する。コヒアはオラクルの出資を受けるパートナー企業だ。
NetSuiteへのAI機能の導入は、例えば文書の自動分類やOCR(光学式文字認識)、請求書のキャプチャーや帳票からのデータ抽出といった書類面のサポート、サプライチェーン予想リスクや時系列予測、フォーム入力の自動化といった予測予知の部分、そして対話型AIによる文書の内容分析や翻訳といった部分から始めていく。
国内外の多くの企業が自社サービスに生成AIの導入を進めているものの、肝心の生成AI技術は外部頼みなのが実情だ。こうした中、オラクルでは「コヒア」という生成AIスタートアップに投資し、B2C要素も強いChatGPTとは差別化を図る形で、B2B向けの大規模言語モデルとして開発を進める。
10月31日に日本オラクルが開催したイベントで三澤社長は「2024年はエンタープライズ生成AI元年になる」と力説した 。オラクルはNetSuite以外のあらゆる自社サービスにも生成AIの導入を進めている。生成AIで企業の働き方をどう変えていくのか。24年以降の展開に注目だ。
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