QRコード、タッチ決済 鉄道はキャッシュレス乗車でどのように進化するか:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(6/6 ページ)
JRや大手私鉄では、すでに交通系ICカードが普及・定着したにもかかわらず、QRコードやクレジットカードのタッチ決済が導入されつつある。交通系ICカードで十分なはずが、なぜQRコードやクレジットカードタッチ乗車にも対応するのか。これからどうなっていくかを考えてみたい。
クレジットカード会社の逆襲かも?
QRコード乗車券、クレジットカードタッチ乗車、それぞれ鉄道事業者も利用者も利点があると分かった。また、関西大手私鉄のほうが取り組みが進んでいることも興味深い。大阪・関西万博の経済効果の1つだといえそうだ。
またクレジットカード会社の視点に立つと、ショッピング決済にコマを進めた交通系ICカードに対する反撃とも取れておもしろい。22年7月、交通系ICカード事業10社は共同で、同年6月24日に交通系ICカードの電子マネー利用件数が1000万件を超えたと発表した。一方、日本クレジットカード協会は、23年8月のクレジットカードショッピング契約件数が15億6014万2639件と発表している。1日当たり5032万7181件だ。
交通系ICカードでのショッピングは、クレジットカードショッピングの5分の1まで伸びている。交通系ICカードがショッピング分野に進出したなら、クレジットカードだって交通分野に切り込んでやろう、という筋書にも見えておもしろい。
利用者にとっては選択肢が多いほど便利だし、クレジットカードタッチ乗車でクレジットカードのポイントがたまると、ちりも積もれば山となりそうだ。一方、交通系IC乗車券も乗車ポイントや電子マネーポイントを採用している。これはよい競争だ。いいぞもっとやれ。
【参考】どうなる?今後の交通系キャッシュレス決済 〜鉄道事業者の戦略〜(運輸総合研究所)
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてパソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICETHREETREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。
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