分業体制の罠 「スペシャリストという名の作業マシン」を量産する組織に未来はない:トライバルメディアハウスのマーケ戦略塾(2/3 ページ)
業務が高度化すると、生産性向上を狙って「分業」がよく行われます。しかし、それが従業員の「やりがい」や「働きがい」を減らし、最終的に離職率や競争力を悪化させている課題があります。この問題はどう解消すべきでしょうか?
The Modelに潜む3つの課題
B2Bマーケティングでは、いわゆる「The Model」の弊害が目立ってきました。
The Modelとは米セールスフォース社が提唱した概念で、従来の「営業リスト作成→メールや電話でのアプローチ→提案→受注・契約→顧客サポート」といった一連の流れを営業部門が一貫して担うのではなく、「リード獲得とリード育成」はマーケティング部門、「リードの選定とアポ獲得」はインサイドセールス部門、「商談・受注・契約」は営業部門、そして顧客サポートはカスタマーサクセス部門が担うという、営業プロセスを分業することで効率化を目指すモデルです。
長年多くの企業で、これら一連の営業プロセスを営業部門が一括して行うことの煩雑さと非効率さが大きな課題になっていました。そのため、The Modelは「B2Bマーケティング(営業)の革命」として脚光を浴び、導入企業が続出しました。しかし、近年いくつかの課題が出てきています。
1つ目が、KPIの分断による部分最適化の罠です。例えば、リードの選定とアポ獲得を担うインサイドセールス部門のKPIは(次フェーズの)営業部門に営業先とのアポを提供することですが、目標数値が達成できていない場合、自部門の目標を達成させるために質の低いアポを上乗せするケースが発生します。
確かにインサイドセールス部門のKPI(営業部門に提供するアポ数)は達成されますが、質の悪いアポを提供された営業部門は頑張って商談をしても案件化しなかったり受注率が上がらなかったりと苦労します。これが「行き過ぎた部分最適化の弊害」です。
2つ目の課題が(本稿の主題である)「創意工夫が生まれないこと」です。担当領域のKPIしか追わない(追えない)社員の視座は低く、目の前の仕事にしか取り組みません。自部門の目標数値とにらめっこをしながら、自部門の、かつ自分に割り当てられた「自分の仕事」だけに集中して取り組む日々の連続です。
しかし、本来会社が成し遂げたいことは営業効率の最大化です。営業効率を上げるためには、各段階の仕事がシームレスに接続されていなければなりません。次フェーズの部門に「良いパス」を渡すためには、いま渡しているパスが良いパスになっているかどうかを検証する必要があります。もし、次フェーズの部門が「悪いパスばかりだ」と感じているのなら、良いパスになるよう、創意工夫を凝らさなければなりません。
しかし、高度に分業化が進んだ組織の仕事では、前フェーズや次フェーズを意識したアクションを考えられるレベルまで視座を上げるのも難しいでしょう。ほとんどの社員が虫の目(部分最適)で仕事をし、誰も鳥の目(全体最適)で全体を見ることができない。これでは本来目指していた「全体の効率向上」を実現できるはずがありません。
そして、この課題が持つ大きな問題がもう一つあります。それが、虫の目で部分最適の業務を繰り返すことによる「やりがい」の低下です。視座が低く、視野が狭い「虫の目での部分最適化業務」は成長実感を感じづらく、モチベーションが下がって転職してしまうのです。
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