日本企業でイノベーションが進まない理由 7カ国の経営者調査から探る(2/2 ページ)
日本企業が抱えるイノベーションについての課題を、Miroの日本法人ミロ・ジャパンの五十嵐光喜代表執行役社長に聞いた。
チームワークと生成AIにヒントあり
五十嵐氏は東芝で勤務したのち、グローバル企業での要職や、日本法人の社長などを歴任してきた。その経験から、グローバル企業と日本企業ではイノベーションを起こすプロセスに違いがあると感じている。
「欧米の企業がイノベーションを起こす場合は、どちらかというとカリスマ経営者が主導するケースが多いと思います。画一的にスピード感を持って進める方法ですね。一方、日本企業の強みはチームワークだと思っています。1970年代や80年代に日本企業の製品が世界を席巻したときも、チーム内のコミュニケーションの積み重ねで、イノベーションを起こしてきました。
個人的にも、イノベーションを起こす力が、現場の社員から生み出されてくることが重要だと思っています。製品のイノベーション、ビジネスのイノベーション、企業文化のイノベーションに軸足を置いて、お客さまの課題や、現場の社員が解決したい課題をきちんとひもといていくことが必要ではないでしょうか」
チームワークでイノベーションを進める際に、重要なのはコミュニケーションだ。現在はさまざまなコミュニケーションツールがあるものの、議論を積み重ねていく過程で時間とともに記録が流れていく、または議論した内容が詳細に共有されずにメンバーの中で分断が起きていくといった問題が多くの職場で生じている。
この問題を解決するのが、現在関心が高まっている生成AIの活用だ。
五十嵐氏は、生成AIの特性を理解した上で活用できれば、これまで以上にコミュニケーションの充実を図れると考えている。
「生成AIはこれから無視できないテクノロジーの1つで、活用しない手はないと思います。ただ、今はまだ黎明期です。質問すると100%正しい答えが返ってくるような変な期待を持っていると、行き先を誤ってしまう可能性もあります。
現状の生成AIは、過去の知見の蓄積に基づいて、ナレッジワーカーの手作業を効率化することに大きな力を発揮することは間違いありません。優秀な秘書が1日かけて作ってくれる報告書を、5分で作ってくれると言えば分かりやすいでしょうか。さまざまなツールと組み合わせることで情報共有は円滑になり、コミュニケーションにかける時間を増やすことができます。
イノベーションを進める上での課題の多くは、コミュニケーションを充実することで解消できます。イノベーションが急務と考えている経営者は、まずはイノベーションを可能にする環境づくりとマネジメントを進めてみてはいかがでしょうか」
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