「日プ」はなにがすごいのか? アイドルビジネスの歴史から考える(1/3 ページ)
「PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS」(通称:日プ)は、アイドルオーディション番組の新たな潮流をもたらしている。これまでのアイドルビジネスの歴史から、なにがすごいのかを振り返りたい。
「PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS」(通称:日プ)は、アイドルオーディション番組の新たな潮流をもたらしている。この番組の特徴は、100%視聴者投票によってデビューメンバーが決定するという点だ。その最終回が16日にテレビ放送を終えたので、今回は「日プ」は何がすごいのか検討していきたい。
そもそも伝統的な「アイドル」といえば、目利きの専門家やプロデューサーの意見が重視されることが一般的であった。オーディションの内容は、ライブDVDの特典映像やテレビ番組の特集などで公開するケースはあっても、その過程については原則としてクローズドであった。しかし日プでは、視聴者が直接的にデビューメンバーを選出し、その過程さえもエンタメ化することでデビューに先立ってファンのエンゲージメントを高めることに成功している。
ビジネス的に見た「アイドル」の変遷
アイドルプロデュースの変遷とオーディションのエンタメ化について、日本のアイドル業界の進化を中心に考察していこう。
1970年代からの日本のアイドル業界は、テレビやメディアと足並みをそろえる形で成長してきた。71年にデビューした南沙織氏を皮切りに、山口百恵氏や「キャンディーズ」、80年代には松田聖子氏や秋元康氏プロデュースの「おニャン子クラブ」が時代を席巻した。
この時代のアイドルはテレビというメディア出演を通じて、ファンに夢や憧れを提供する存在だった。キャンディーズが引退公演の終わりに述べた「普通の女の子に戻りたい」というフレーズは、アイドルがその夢を背負う時代だったことを象徴する名言だ。この時代のアイドル像が、職業としての完璧さを求めるものであったことから、未熟な部分が明るみに出るオーディションがエンタメ化されることは少なかった。
そんな日本のアイドルオーディションがエンタメ化するきっかけとなった事例は90年代後半に人気を博したテレビ東京のオーディションバラエティ「ASAYAN」にある。これは今でいうリアリティー番組というカテゴリーで「モーニング娘。」も当番組で生まれたアイドルだ。アーティストの分野では「CHEMISTRY」も同番組が輩出している。
ASAYANの成功は、本来まだ表に出る段階ではない育成の過程もエンタメになりうることを示したのだ。アイドルから少し外れるものの、90年代末から2000年代前半にかけては、ASAYANの他にも不良少年のプロボクサー育成を目的とした「ガチンコ・ファイトクラブ」といった番組も視聴者の人気を集めるなど「育成リアリティー番組」のブームがあった。
ただし当時はインターネット文化がそこまで発達していなかったこともあり、オーディションや育成の過程に視聴者の「世論」が参考になることはあっても、日プのようにオーディションの合否に直接影響することはなかった。
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