三陽商会「バーバリーショック」から復活? 7期ぶり黒字の裏側:磯部孝のアパレル最前線(3/6 ページ)
三陽商会の2023年2月期連結業績は、売上高が582億円(会計基準変更前の前期は386億円)、営業損益が22億円の黒字(同10億円の赤字)、純損益が21億円の黒字(同6億6100万円の黒字)となった。本業のもうけ=営業損益が黒字になるのは7期ぶりで、「バーバリー」のライセンス事業を失って以来初となる。
「ブルーレーベル」「ブラックレーべル」の登場
その後大きな転機が訪れる。1996年に日本発のオリジナルレーベル「ブルーレーベル」が登場したのだ。その背景には、5年前に英国本社でスタートさせたカジュアルラインの「トーマス・バーバリー」の誕生も影響していた。創業者名を冠としたカジュアルラインは、2002年までの展開だったのだが、このように新ラインを誕生させてブランドリニューアルを図ったのには、それなりの理由があった。
英国バーバリーは1955年に大衆雑貨を扱う「グレート・ユニバーサル・ストアーズ」に買収され、幅広い商品にライセンス供与を行うようになる。その結果、バーバリーのブランドは家の壁紙から安価なチョコレートまで、あらゆるカテゴリーで展開されることになってしまった。また当時は、ライセンス管理が甘かったことから、製品の価格、デザイン、品質にばらつきが多くなり、高級感が損なわれることになった。
その後、商品ラインを全て見直し、ブランドポートフォリオを刷新。ライセンス製品を厳格に管理することで、ブランド力を取り戻すことに尽力を注いでいる過程でのブランドリニューアル戦略だったのだ。
その一方でブルーレーベルは、従来の大人な富裕層から若年層にターゲットチェンジを図った。イメージは20歳当時のオードリー・ヘプバーンやジャクリーン・ケネディで18〜25歳くらいを想定年齢とした。ちょうどこの頃の日本のヤングレディス市場では、渋谷ギャル文化全盛の時代。ブルーレーベルは、安室奈美恵さんが愛用したこともあって大ブレイクした。
続いて98年には25〜35歳くらいの男性をターゲットにした「ブラックレーべル」も登場。2015年まで商品展開をしていたブルーレーベル、ブラックレーベルという日本でのブランドリニューアル戦略は当たり、日本市場でのバーバリーブランドの再認識にひと役買うきっかけとなった。
【訂正:2023年12月23日14時15分 初出で「2012年まで商品展開をしていた」と表記しておりましたが、誤っておりました。正しくは「2015年まで商品展開をしていた」です。訂正してお詫びいたします。】
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