三陽商会「バーバリーショック」から復活? 7期ぶり黒字の裏側:磯部孝のアパレル最前線(5/6 ページ)
三陽商会の2023年2月期連結業績は、売上高が582億円(会計基準変更前の前期は386億円)、営業損益が22億円の黒字(同10億円の赤字)、純損益が21億円の黒字(同6億6100万円の黒字)となった。本業のもうけ=営業損益が黒字になるのは7期ぶりで、「バーバリー」のライセンス事業を失って以来初となる。
ブランドを重視した英国バーバリー
しかし、結果的に英国バーバリーは、ライセンシーである三陽商会よりもブランドを重視した。その理由の1つとして、中国人をはじめとする訪日観光客が増え始め、三陽商会がつくったバーバリー製品を見て「日本のバーバリーは、ほかの国のものと違う」といった声が聞かれるようになったことが挙げられる。
ブランドの価値に敏感になっているバーバリーにとって、三陽商会は「バーバリー」の名を冠した製品を独自につくり、ブランドの一貫性を損なう存在となってしまったのだ。
実際、交渉時に英国バーバリーの最高経営責任者にまで上り詰めていたクリストファー・ベイリーは、ライセンス引き上げについてのインタビューに次のように答えている。「情報が一瞬の間に世界中を駆け巡ってしまう時代に、異なるリージョン(地域)で異なる製品やプロモーションが展開されていては、ブランドは一貫性を保てない。不可避の決断だった」
そして、当時のバーバリーの売上高全体に占めるライセンス収入の割合はわずか2%弱にすぎない。同社の16年上半期の業績は、ライセンス売上高は三陽商会を切り離したために54%減だったが、全体の売上高でみると4%減のレベルだった。
米国ポロ・ラルフローレンと比較
アパレル業界では過去にも同様のことが起きている。英国バーバリーとよく比較されるブランドとして、米国ポロ・ラルフローレンがある。ブランドの歴史は違うものの、両ブランドとも欧米のトラディショナルなスタイリングを得意としている。
そこで、両ブランドの日本進出の経緯をまとめた対比表を作ってみた。両社とも日本初上陸に向けて、現地企業と販売ライセンスや製造・販売ライセンスを結んで進出している。当然、海外進出を始めるにあたっては、現地の生活者の好みや価値観など現地企業に任せた方が合理的だ。
日本で展開して、市場にしっかりと浸透して認知され、単独展開できるようになれば、100%自社マネジメントに切り替える。この2例の他にも、デサントは1998年末にアディダスにライセンスを引き上げられ、98年に1029億円あった売上高は2001年に628億円まで落ち込んでしまった。
しかし、自社の「デサント」ブランドに磨きをかけた。競技ウェアへの提供による技術力の向上と韓国市場での成功もあって、直近の決算では1206億円と前年2桁の伸びを示し、アディダスショック自体が完全に過去のものとなっている。
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