コラム
Suica以上のメリットがあるの? 鉄道各社が「QRコード乗車」に力を入れるワケ:経済の「雑学」(4/5 ページ)
2023年12月にも東急電鉄と京王電鉄から発表があったように、ここ数年「交通系ICカード」に力を入れてきた鉄道各社が、「QRコード乗車」に力を入れている。なぜだろうか。
京王電鉄もQRコードを活用した乗車実験を開始
京王電鉄は12月13日、23年度中に一部の駅でタッチ決済やQRコードを活用した乗車サービスの実証実験を開始し、24年度内に全駅に展開すると発表した。
タッチ決済は、交通系ICカードと同様の利用が想定される。気になるのはQRコード決済だ。京王線の企画乗車券を乗車券販売サイトで事前に販売し、利用者はスマートフォンに表示されたQRコードを改札機にかざして乗車できるようにするという。
やはり対象は企画乗車券である。京王電鉄には、一日乗車券のほかにも、往復割引乗車券と高尾山ケーブルカーまたはリフトの割引乗車券が一体になった「高尾山きっぷ」、加えて温泉施設の入館と食事がセットになった「高尾山湯ったりきっぷ」、沿線遊園地の施設利用券と鉄道の一日乗車券がセットになった「京王アミューズメントパスポート」などがある。こういった企画乗車券は従来、自動券売機でしか買えなかった。
こうした乗車券を、キャッシュレス/チケットレスとするのが京王電鉄の方針だろう。企画乗車券を従来よりもずっと作りやすく、これまで紙のきっぷでしか販売できなかったものをデジタル化できるのが、鉄道各社がQRコードに着目する理由なのだ。
関西の京阪電気鉄道では24年6月に、JR西日本では24年度下期にQRコードを使用したサービスを開始することも、最近発表された。
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