JR東海、JR東日本、JR西日本、JR貨物がチャレンジする次世代エネルギー 実現までは遠くても、やらねばならぬ:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/7 ページ)
JR東海が12月18日、鉄道車両向け燃料電池の模擬走行試験を報道公開した。燃料は水素で大気中の酸素と反応して発電する。燃料電池は水だけが出て二酸化炭素などは発生しないため、脱炭素動力の切り札ともされる。水素エネルギーへのJR4社の取り組みを紹介し、鉄道にとっての「水素」を考えてみたい。
次の挑戦は水素を燃やす「水素エンジン」だ。こちらは24年度以降に模擬走行試験を開始したいという。いずれにしても、車両に搭載して営業運転にするには時間がかかる。燃料電池と水素エンジンの両方を試験すると聞いて、新型車両に燃料電池、旧型ディーゼルカーは水素エンジンに改造するのかと思ったけれど、実用化目標は20年も先だから、新型車両用の開発となる。そのときにどちらがよいか、両方ともやってみよう、という試験が行われている。
自動車分野ではトヨタがハイブリッド、プラグインハイブリッド、バッテリーEV、バイオエタノール燃料、燃料電池、水素エンジンのオールレンジで開発している。どれが主流になっても対応可能とするためだ。JR東海もハイブリッドを実用化し、バイオエタノールエンジン、バッテリー、燃料電池、水素エンジンを試験している。
水素に関してトヨタは21年のスーパー耐久レースに水素エンジン搭載車を投入し、富士スピードウェイ24時間をはじめ、シーズンすべてのレースで完走した。成績は下から数えた方が早い。これは給油ならぬ給水素に時間がかかり、給水素回数が多いため。ラップタイムはライバルと互角だった。23年に富士スピードウェイで開催されたスーパー耐久24時間レースでは、世界で初めて液体水素エンジン車を投入し完走した。給水素の時間と回数を大幅に減らした。
トヨタとJR東海の両社に共通するところは、「移動」に誇りと責任を持っていること。もう1つは愛知県にあること。愛知県は新しい乗りものが大好きだ。「ガイドウェイバス」はBRTの先駆者といっていいし、時期浮上式(HSST)の新交通システム「リニモ」は実用化された。現在はLRTのようなバスSRTを実験中である。もっとも桃花台新交通(とうかだいしんこうつう)ピーチライナーは15年で廃止。見切りも早い。いやこれは蛇足だったか。
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