「トークン化は決済環境にゲームチェンジをもたらす」 Visa日本法人社長、次の一手:新春トップインタビュー(2/2 ページ)
急速に浸透するタッチ決済。そのかじを取る、Visa日本法人社長は何を語るのか。2024年への意気込みを聞く。インタビュー後編。
――法人市場において、キャッシュレスを妨げるような日本の独特な部分はありますか。
特に日本固有の理由があるわけではないと考えている。法人間決済はどの国でも普及率が高いわけではない。消費者向けよりも、法人間決済のほうが普及が難しいといえるだろう。
ただアジア各国、日本もそうだが、消費者の世界で起きてきたイノベーションをビジネスの世界でも望む動きがある。消費者決済におけるイノベーションがまず普及し、法人間決済が後から来るという流れだ。Visaは、その需要を満たすためにサービスやプロダクトを提供していく。
――タッチ決済、BPSPは、同様の機能を他の国際ブランドも提供していますが、それぞれ名称が異なります。メディアにおいても消費者においても、名称が統一されていないことで混乱が生じており、利用者の認知にも課題が生じています。名称を統一することはできないのでしょうか。
それぞれのブランドがそれぞれの独自の名称を付けているので混乱させがちであるのは分かる。ただし日本の進展状況を見ると、加盟店と消費者の間で「タッチ決済」といえば、どのブランドであれ、同じ決済方法だという理解は広まっているようだ。もっと数多くの消費者、加盟店も使うようになり、タッチ決済対応マークに慣れていけば、なじんでいくと思う。
これはほかの国で進化してきたのと共通のパターンだと思う。消費者がレジに行って「タッチ決済で」という人もいれば、「クレジットで」という人もいる。しかしタッチ決済が進展すれば呼び方も統一されていくだろう。
トークン化が未来を飛躍的に変える
――「生成AI」など、さまざまな業界にとってゲームチェンジとなる技術や取り組みが登場してきています。日本市場において、Visaはどんな“ゲームチェンジ”を目指していますか。
Visaが力を入れているのは、これまで話してきたこと全ての裏にあるもの、トークン化だ。これは決済のクレデンシャル(認証情報)をトークン化することで、セキュアで柔軟にモバイル上で利用できるようにするものだ。
当初、トークン化はセキュリティのためのツール、取引を安全にするためのものとして展開してきた。しかしこれが普及してインフラになったら、さらにトークン化によるユースケース、つまり新たなサービスや機能の提供が可能になる。
カード番号は通常一つのアカウントとつながっている。ところがトークンを使えば、一つの決済アカウントについて、数多くのトークンを作ることができる。すると「ある金額のある一カ所の取引でのみ使える」というトークンも作ることができる。
例えば親が子供にトークンを一つ発行すれば、おもちゃをある日にある金額まで特定のお店でだけ買うことに利用できるようになる。企業では、社員が4週間出張に行くときに、その間に会社が事前に手配した特定の場所だけで利用できるようにすることも可能だ。
想像してもらえれば、さまざまな利用法が考えられることが分かるだろう。消費者が特定の店舗でだけ使えるようにしたり、特定のトークンにひも付いた割り引きの提供も可能だ。
ポイントとつなぐこともできるし、暗号資産を使っていればそれともつなげられる。いろいろな支払い元やデータの形があると思うが、それらのいずれもトークン化できる。トークン化は非常にパワフルで、プラットフォームとして、さまざまな体験を可能にするものだ。
日本における大きなチャンスは、60%に上る現金取引の大部分を電子決済に移行させる余地があることだ。ほかの国では、現金決済ではないレガシーな決済方法があったので、それらを徐々に電子決済に変えていくことが必要だった。しかし日本では現金が使われているので、徐々に変える必要はなく、ひとっ飛びに変えられる環境にある。
インフラとなる技術、つまりタッチ決済や全てを支えるトークン化を進められれば、今後何年かで大きく日本を変革できると考えている。革新的で、最もパーソナル化した日本という姿を見せられるだろう。インフラの上に、例えばAIなどを積み上げていくこともできる。パーソナル化されたショッピング体験など、これまで電子決済になかったものを乗せられる。これによって日本を大きく変えられるだろう。
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