「ゲゲゲの謎」予想外の大ヒット 広告は見かけないのになぜ?(2/2 ページ)
映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』の勢いが止まらない。広告はほとんど見ない一方でファンの間で人気は過熱、新たなファンを取り込んでいる。ここまで人をひきつける要素とは何か。
ブランドロイヤルティーの高い層をターゲットに?
この点、ゲゲゲの鬼太郎も名探偵コナンも、今までとは一風変わった男性キャラの導入で女性ファンを獲得しているといえるだろう。原作側がこのように女性ファンを獲得するように狙う背景には、やはり戦略的な考え方があると思わざるを得ない。
ゲゲゲの鬼太郎や名探偵コナンのような長寿アニメシリーズが女性ファンを獲得するために一風変わった男性キャラクターを導入した背景には、市場の多様化とファン層の拡大という狙いがあるのだろう。これはアニメ業界全体の動向とも関連しており、特に女性視聴者を引き込むための戦略的な動きとして理解できる。
そもそもアニメ市場は収益源のいわゆる「円盤」(DVDやブルーレイディスク)の販売数が低迷し、新しい収益源と視聴者層を開拓することが必須となりつつある。この点、女性ファンはマーケティングの観点ではブランドロイヤルティーが高い顧客層に分類されるため、重要なターゲットだ。
ブランドロイヤルティーとは、例えば映画作品でいうと、映画チケットだけでなくグッズを購入したりイベントにも参加したりと、作品への投資意欲も強い傾向にあることをいう。また、推し活のやり方もコミュニティーでのつながりが強く、他の女性ファンを引っ張ってくる力もある。
ゲ謎においては、伝統的な妖怪の世界に現代的な感覚を取り入れ、魅力的な男性キャラクターを設定することで、特に若い女性層の獲得に成功し、映画のリピート視聴者を獲得したことはヒットの大きな要因となったのだろう。
ここまでを踏まえると、ゲ謎は、原口なおこ氏こそ意図しないヒットであったと認識しているかもしれないが、実際のプロデュースやマーケティングの現場においては、ある程度綿密な戦略が練られていたと考えた方がより自然なのかもしれない。
女性ファンを意識した戦略がより重要に
近年では、オタク文化の象徴となるエリアが00年代の「秋葉原」から近年では「池袋」へシフトしている様子が確認できる。23年は渋谷ではなく池袋でコスプレハロウィーンの動きが起こり、アニメキャラクターなどのコスプレが花道を作ったり、参加者のマナーの良さが渋谷のそれと対比される形で話題となった。
秋葉原が主に男性向けのアニメやゲーム、電子製品の中心地として知られるのに対し、池袋ももともとは「乙女ロード」と呼ばれる女性向けのアニメやマンガ、キャラクターグッズの店舗が集まるエリアとして長い歴史を持っている。この地域が令和になってクローズアップされている背景には、女性オタク文化の台頭を示しているといって良いだろう。
今後はSNSの発達により、よりファン同士の情報共有や作品に対する情熱が高い女性ファンのロイヤリティーへの注目が集まるだろう。次第に女性ファンをターゲットとしたコンテンツが増加していく可能性もある。グッズの展開やイベントの開催など、女性ファンをひきつけるマーチャンダイジング戦略も欠かせない。
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