ユーザー調査の「使いたいと思います」を信じてはいけない、3つの理由:グッドパッチとUXの話をしようか(4/5 ページ)
新商品の発売前などに「ユーザー調査」を実施する企業もあるかと思います。その中で「使いたいと思いますか?」という設問への回答は信頼すべきではないようです。なぜかというと……
定量調査の価値を高めるために工夫できること
ここからは、定量調査でも正しくユーザーの「欲しい」を捉える方法を紹介します。一般的なアンケートを実施するよりは手間がかかりますが、その後使われる莫大な開発費や広告宣伝費を考えると、ここでちょっとした手間をかけておく方がよほど効率的です。
手間をかけるほど確度は上がりますが、状況に応じて使い分けられる3つの工夫をまとめてみました。これらは当社の案件でも実際に活用した手法です。
工夫1:身銭を切ってもらえるかを擬似的に検証する
先ほども触れた通り、最も確かめたいのは「ユーザーは本当に身銭(お金だけでなく情報や労力なども含む)を切ってまで、そのサービスを使いたいと思うか? 購入するか?」という部分です。これを検証する方法として「プレトタイプ」という手法があります。詳しい方法はこちらの記事をご覧ください。
プレトタイプの「プレ」には、「〜より前に」という意味と「プリテンド(pretend=ふりをする)」という意味が込められています。プロトタイプを作ってしまうと予算と時間がかかるので、その前にプレトタイプを実施してアイデアの確かさを検証しよう、という考え方です。
プレトタイプには複数のやり方があり、上の記事では「ニセの玄関型」と呼ばれる手法を紹介しています。これは、SNSなどで虚偽の広告を掲載することで、広告から商品の紹介ページに来てくれるユーザーの割合や、紹介ページから実際に商品を使おう(買おう)とするユーザーがどのくらいいるかを測るというものです。
虚偽の広告なので「ユーザーを騙すことになるんじゃないか」と懸念を持たれる方もいるかもしれませんが、実は欧米では積極的に活用されている手法です。実際に購入しようとするほどそのサービスに興味を持ってくれたユーザーは、虚偽であることに落胆する以上に、そのサービスが実際に使えるようになるために、前向きな意見を届けてくれます。
工夫2:「高いハードルを超えてもらえるか」を検証する
身銭を切るかどうか、と同じくらいユーザーの興味の度合いを測る方法として有効なのは「どれだけ手間をかけられるか」を確かめる検証です。実際に当社で行った案件をベースに説明します。
その案件では、クライアントが計画していた新サービスの構想がユーザーに受け入れられるか検証するため、価値を言語化し、ストーリーボードを用いたユーザーインタビューを行いました。
インタビューで得られた示唆をまとめ、構想をブラッシュアップする方向性はまとまったものの、その方向性の確度を別の角度からも検証する必要があると感じ、プレトタイプを実施しました。それは「回答負荷の高いアンケートに答えてもらう」というものです。
クライアントの別サービスが持つターゲットリストに向けてメールを配信し、本文には、新サービスの概要とアンケートへのリンクを貼ります。アンケート回答の謝礼は「今後、サービスの追加情報がもらえる」という形に。アンケートのボリュームを「あえて」多くしておくことがポイントです。
こうすると、アンケートに全て回答し、かつ好意的な内容を記載しているユーザーはサービスに対する興味が高いと分かります。興味を持ったユーザーの割合とその背景、両方を捉えられるわけです。
この案件では、強い興味を持っていたユーザーにさらにインタビューすることで、磨き込むべき価値に気付けましたし、サービスをリリースする際の強力な初期ユーザーを、早い段階で獲得することにもつながりました。
先に述べたように、定量的に把握した受容度はあくまで参考値として取り扱います。大切なので何度も言いますが、「どんなユーザーに、なぜ刺さるのか(受け入れられるのか)」を正しく認識することが目的であることを忘れてはいけません。
この案件では「クライアントの別商品に関わりがある人」を母集団としたため、ユーザーの属性などが偏ってしまうリスクもありました。検証の精度を高めたい場合、工夫1で実施したSNS広告などを活用した方が良いでしょう。
また、メール以外の方法として、関連するテーマでウェビナーを開催し参加率を確かめたり、資料(ホワイトペーパー)を用意し、ダウンロードしてくれるユーザーがどのくらいいるかといった数値を参考にする方法もあります。自社の予算やスケジュール、サービスの検証フェーズをふまえ、最適な方法を選ぶ際の参考にしてみてください。
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