「文房具買うにも申請書」 紙だらけのフジッコ、”紙とハンコの撲滅”どう実現した:業務のムダ改革(1/2 ページ)
フジッコの社内は紙であふれかえっていた。文房具一つ買うにも申請書と検印が必要で、同社の工場では1日に2600枚もの紙が消費されていた。前時代的な慣習の中で、どのように「紙とハンコの撲滅」を実現していったのか?
フジッコのオフィスは、紙で溢(あふ)れかえっていた。「フジッコのおまめさん♪」というCMのフレーズで有名な、豆製品と昆布製品の食品メーカー。その社内では月に何千枚もの紙が飛び交い、文房具一つ買うにも紙の申請書を要した。全国に7拠点ある同社の工場では、1日で2600枚もの紙を消費している。
紙の情報を担当者が社内システムに転記するという運用に加え、生産現場では誰がどう作ったかも分からないエクセルを使ってデータ管理をしていた。計算式はブラックボックス化していたため、誰もメンテナンスできなかった。強い課題感はあったものの、変えることのコストは大きい。優先度は高いが緊急度が低く、着手しにくい問題と化していた。
しかし、トラブルが起きてからでは遅い。福井正一代表取締役社長執行役員が旗振り役となり、2022年3月に「DX推進委員会」を立ち上げた。委員長に就任した福井社長と専属メンバー、営業・生産・開発など各部門の本部長が中心となって、DXに向けた取り組みがスタートした。
主にバックオフィス部門で「紙とハンコの撲滅」に奔走した寺嶋浩美さん(取締役 上席執行役員 イノベーション・ガバナンス・人財領域担当)と、DX推進委員会のメンバーとして生産部門のDXに携わっている 岡山浩之さん(経営企画部 DX推進グループ)に話を聞いた。紙が溢れかえる会社はどのように変わっていったのだろうか。
10以上の検印が必要なものも 「紙とハンコの撲滅」は実現できるのか?
DX推進委員会発足の前、20年から「紙とハンコの撲滅」の機運が高まっていた。新型コロナウイルスの流行により、出社しなくても仕事ができる環境を構築するため、経理・人事部門を主な対象とした「紙とハンコの撲滅」に取り組むことになったのだ。
寺嶋さんは「これまでは、基本的に紙の申請書類と複数の上司の検印が必要でした」と話す。休暇の届け出から備品購入の申請まで、全てにおいて書類を提出しなければならず、その中には10近い検印が必要なものもあった。さらにこうした書類は一定期間の保存が必須なため、保管スペースも確保しなくてはいけなかった。
しかしコロナ禍の影響で、フジッコに限らず、さまざまな企業でデジタル化が進んだ。世の中にバックオフィス職種に特化した月額課金のSaaSが増えてきた背景もあり、経理と人事は比較的スムーズに紙からデータに移行した。ハンコについては、各担当者の職務権限を明確にした上で決済権限を3倍ほどの金額に拡張した。
問題は、バックオフィス以外の工場や各部署など同社独自の手法でデータを管理していた部門だった。特定のSaaSを導入すれば解決するという簡単ではない事情に加え、DXに強い人が部署内にいなかったのだ。そこで福井社長が立ち上がり、22年3月に同氏が委員長を務める専門部門「DX推進委員会」が発足した。
そのDX推進委員会を運営する事務局として、専門チームである「DX推進グループ」に所属するのが岡山さんだ。岡山さんは生産部門(工場)のDXをメインに進めているが、その道のりは険しいものだという。どういった課題を抱えているのだろうか。
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