なぜSFAへの記入漏れは減らないのか 米国企業に学ぶ「使えるSFA」設計:データドリブンな営業への道筋(3/3 ページ)
「SFAの入力が進まない」「SFAをうまく活用できていない」という声が多くの営業組織から聞こえてくる。どうしたら営業担当はSFAに記入してくれて、そのデータを営業活動に活用できるようになるのか? 米国企業が取り入れている方法を解説する。
顧客情報はSFAではなく、DSRに入れる
SFAに顧客からのヒアリング内容を細かく記録している企業もいるが、SFAはあくまで社内共有用のツール。どうせ書き込むなら、顧客が確認できるツールの中に情報を入れたほうがいい。
最新のトレンドは、顧客に関するヒアリングや提案はできるだけDSR(デジタルセールスルーム)に記録することだ。DSRは顧客専用の提案サイト構築のシステムであり、取引先ごとに専用のルームを作ることができる。その中に、顧客と商談が進んだ背景や、顧客の現状課題、自社の提案内容、双方で進めなければならないネクストアクションなどを記入していく。
社内の共有のためではなく、顧客との共有や状況整理のために記録する。なぜなら、法人取引であれば、顧客も営業から提案を受けたあとに、部門内や上長、関連部門などに受けた提案の説明を行わなければならない。
「なぜ自社はこの取引を進めるべきなのか」「この取引によって何がどう改善するのか」を各所に納得してもらう必要がある。その説明のためのロジックやプロセスを、営業担当と顧客とが共通管理するのがDSRである。営業も顧客のための提案なら、時間を使って書く理由になる。
SFAとは違い、DSRは入力するほど提案がリッチになる。提案が充実しているほど、顧客の社内説明力が高まり、受注率が高まり、結果的に売り上げにつながる。「なんで社内共有のためにわざわざ手入力しなければいけないのだ」という営業担当の不満は、DSRの導入で解決するだろう。
顧客はどんな状況で、何を提案していて、現状はどんなステップなのかをDSRに記しておけば、それがそのままSFAにも残せる社内共有用の営業情報ソースになる。SFAの項目の中に、DSRで作った各社の提案サイトのURLを入れておけば、社内用のメモをわざわざ作成する工数もほぼなくなる。
営業マネジャーは、SFA内のDSRに記録されている各社の提案サイトのリンクをクリックすれば、この顧客はどんな状況か、どんな提案するといいか、ネクストアクションをどうするべきかなどフィードバックをより具体的にできる。営業担当自身も、前回の商談で何を提案して、今回の商談では何を話すかについてセルフチェックができる。営業マネジャー、営業担当、顧客の三方良しの仕組みである。
SFAとデータドリブン営業のまとめ
本日の記事のポイントは、以下の3つだ。
- SFAはなるべく自動入力
- 手入力は注力戦略に関連する項目のみ
- 提案内容などの顧客関連情報はSFAではなくDSRに記録する
営業活動においては、社内向けの共有工数をできるだけ減らし、顧客向けの提案時間に営業リソースを割くべきだ。SFAを間違った解釈で運用すると、ただ営業担当の負担を強いるだけのシステムになる。できるかぎりSFAの運用工数を減らし、顧客に向き合う時間を作ることが営業成功につながる。
筆者プロフィール:藤島 誓也 株式会社openpage代表
ビズリーチにてカスタマーサクセス(CS)チームを立ち上げ後、2018年にopenpageを設立。
CSをデジタル化する「openpage」の製品提供をはじめ、CSの体制づくりのコンサルテーション、SNSでの情報発信、大型オンラインイベントの企画など、米国流のCSを国内で広く啓蒙。openpageではB2B取引の透明性(オープン性)に着目し、「セルフサーブで顧客が考えられる」デジタルセールスの体制構築を支援。営業トーク、製品機能、価格などすべてデジタルの文字情報として起こし、顧客に情報共有可能にしている。
著書に「実践カスタマーサクセスBtoBサービス企業を舞台にした体験ストーリー」(日経BP、2023年)
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