不要な業務アプリが1900個も 20年使ったシステムの引っ越しに見る「業務のムダ改革」(1/2 ページ)
古いシステムから新しいシステムへの移行は大がかりだ。大陽日酸でも20年使用したNotesからの引っ越しでさまざまな「業務のムダ」が見つかった。不要な業務アプリや、膨大な問い合わせ……どのように乗り越えていったのか?
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「この機能を作ってほしい」と依頼されたICT部門が、言われるがままにどんどん新しいアプリや機能を開発した結果、機能重複や使われなくなったアプリがどんどん増えていっている。ただ今のところ大きな問題はないから、まあいいか──といった状況は往々にして起こり得る。
産業ガスに関連する事業を複数展開する、大陽日酸(東京都品川区)も例外ではなかった。同社はグループ内で、1996年からメールやスケジュール、勤怠管理などとしてHCL Notes/Domino(以下、Notes)を利用してきた。各部署が業務効率化のために依頼してくる「Notes内でこういうアプリを作ってほしい、こういう機能を求めている」という相談に応えていった結果、いつの間にか2500個ものアプリが存在していたという。
「Notes専任担当が3人いたのですが、彼らが全ての要望に対応していました。当時は各部署からの依頼されるがままに作業していて、正直統制が取れていませんでした」と、グループのシステム保守を担う、大陽日酸システムソリューションの須永史朗副本部長(ソリューション本部)は振り返る。
本来、各部署からアプリや機能開発の依頼があった場合、使用目的や過去の依頼との類似点を把握し、代替アプリや機能を提案するのが保守の役目だ。しかし当時は、技術的に可能であれば実行するというフローだったため、必要性を精査されることもなくアプリだけが増え続けてしまった。また、Noteにさまざまな機能が集約されすぎた結果、全体像を把握している人間が3人の管理者のうち1人だけという危機的状況でもあったという。
Notesへの機能集約による保守対応の属人化や、当時のNotesはモバイル環境からのアクセスが困難だったことを理由に、業務効率化を目的にNotesから卒業し、業務基盤の整備に乗り出した。
20年使ったシステムからの移行 問い合わせは1日100件にも
Notesからの引っ越しは大がかりなものだった。2016年に引っ越しプロジェクトが始動。機能集約のリスクを感じていたため、特定のツールに依存するのではなく、分散させる方針を採った。
まずは、17年に全てのアプリを集約させた専用のプラットフォーム「Osti」を開設。そこからメール、経費精算、勤怠管理などそれぞれ適したサービスに切り替えていった。稟議申請などのワークフローやマニュアルなどの資料格納といった業務アプリケーションは「kintone」を採用した。
現在、日本酸素ホールディングスを含め53社8000人を超える社員が利用している。長年慣れ親しんだツールからの移行は簡単なものではなかった。
須永氏は「切り替え当初は全国12カ所を回って、1日がかりの説明会を開催していました。自社プラットフォーム『Osti』の公開と同時にヘルプデスクを立ち上げて、そこで全ての問い合わせに対応していました。当初は30人くらいのサポート体制で対応していましたが、現在は外部にヘルプデスク業務を委託していまして、そこで解決できなかった問題をICT部門が対応するというフローになっています」と話す。
月2000件以上あった問い合わせも、現在は1000件程度にまで減ってきた。1日100件ほどの問い合わせが来ることもあったという。
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