不要な業務アプリが1900個も 20年使ったシステムの引っ越しに見る「業務のムダ改革」(2/2 ページ)
古いシステムから新しいシステムへの移行は大がかりだ。大陽日酸でも20年使用したNotesからの引っ越しでさまざまな「業務のムダ」が見つかった。不要な業務アプリや、膨大な問い合わせ……どのように乗り越えていったのか?
kintoneの1つのアプリだけで年間400万円のコストカット
さまざまな混乱があったNotesからの引っ越し作業の中でも、kintone移行は大きな問題が起こらなかった。Notesでアプリを作る際と仕様が似ていたことが大きく、わざわざマニュアルを見なくても直感的に操作し、慣れていける利点があったようだ。
kintoneでは、社内での情報共有用の掲示板やマニュアルなどを格納するライブラリ、稟議申請や契約書といったワークフローなどのアプリを管理していた。その中でも、これまで紙でやり取りしていた契約書をkintoneで電子化したことで、年間400万円ほどのコストカットにつながったという。
「kintone移行による全体のコストカットは試算できていない」(経営企画・ICTユニット ICTマネジメント統括部 デジタルコミュニケーション課 丸山学課長)とのことだが、kitoneの1機能で年間400万円という結果を考えると、膨大なコストカットを実現できていると推測できる。
Notesからの移行で大きく成果を出したkintone。ただ、話を聞いていると、少々Notesの二の舞になりそうな数字が登場した。現在、kintoneだけで700個(移行時は約600個)ものアプリを管理しており、現在も月2〜3件ほど新規アプリをリリースしているという。
1年で24件ほどアプリが増えると、塵が積もって山になってしまいそうだが、どのように対策しているのか?
700個のアプリ 管理できているのか?
須永氏によると、対策として(1)アプリの管理台帳を作成する、(2)保守担当を固定化しない、(3)複雑な仕様は作らない、という3つを定めているという。
アプリの管理台帳には、アプリの仕様や作成経緯の記録を付けている。現在、業務アプリの目的ごとに20ほどのテンプレートを用意しているというが、各部署から新規アプリの作成依頼が入った際にはアプリ管理台帳を参照し、代替可能な類似アプリはないかなどを確認する。そうすることで、無駄なアプリを増やさないようにしているのだ。
既存のアプリでは解決できない場合には、新しいアプリや既存アプリに新たな機能を追加して開発することもある。その場合にも、保守の難易度が上がりすぎないよう、部署と調整しながらシンプルな仕様に寄せる工夫をしている。
(2)の保守担当を固定化させない仕組みづくりは道半ばだという。「外部パートナーに開発に関わってもらい、今後はリソースの偏りや属人化を防ぐ動きを取れればと思います」(須永氏)
須永氏が「道半ば」と話したように、リソース不足は課題視しているという。「kintone専任が3人、伴走パートナーもいてくれていますが、新規のアプリや機能開発を待たせてしまっているところもあります。現在は、市民開発を期待して、『kintone道場』を運営しています」(須永氏)
kintone道場は、社員が自分でアプリを作ったり改善したりできるようにICT部門がアプリ開発の方法などを伝授する取り組みで、2022年に始動した。アプリや新しい機能が増えると、保守コストが年々増えてくる。各部署である程度解決できる仕組みが作れれば、ICT部門の負担も減らせるだろう。
「まだkintone道場自体の認知度が低かったり、受講後のフォローが十分にできなかったりと、改善点はさまざまありますが、会社全体のICTリテラシー向上を目指して少しずつ取り組んでいければと思います」(須永氏)
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