宮武和多哉の「乗りもの」から読み解く:
乗り物全般ライターの宮武和多哉氏が、「鉄道」「路線バス」「フェリー」などさまざまな乗りもののトレンドを解説する。
「東京オリンピック・パラリンピック」の選手村跡地で建設が進んでいたマンション街「HARUMI FLAG」(以下、晴海フラッグ)が、2024年3月に「街びらき」を迎える。
晴海フラッグは総戸数にして5632戸・24棟の高層マンションからなる。「オリンピックレガシー(遺産)の再活用」として整備された晴海フラッグは、最高倍率266倍という争奪戦の上で完売したという。
晴海フラッグへのアクセス手段として、東京BRTのバス路線「選手村ルート」が、街びらきに先駆け2024年2月1日に運行開始。晴海5丁目ターミナルを発車し、晴海フラッグ内の2か所に停車。晴海フラッグ〜新橋駅前を、無停車でたった11分で結ぶ。
「BRT」とは、「Bus(バス)・Rapid(速達)・Transit(交通機関)」の略で、コロンビア・ボゴタ、ブラジルのクリチパ市など、いまや世界200都市以上で導入されている。
東京BRTはこの街からの移動手段として市民権を得られるだろうか。運航を担う「東京BRT株式会社」、東京都都市整備局に現状を伺ったうえで、現状4つの課題があると筆者は考える。
東京BRT 開業区間に乗ってみて、見えてきたこと
BRTと普通の路線バスとの違いは「専用道・PTPS(信号を制御するシステム)で高速走行」「キャッシュレス支払いや車外での改札で、乗降時間を短くする」「100人以上が乗車できる連接バスで多量輸送」など。交通機関としての位置付けは「路線バス以上、LRT(路面電車)に近く、高速鉄道未満」といったところだろうか。
晴海フラッグは最寄り駅(都営大江戸線・勝どき駅)までの距離が1.5キロ(徒歩)もあり、東京駅から3キロ少々という立地にもかかわらず“陸の孤島”と言われがちだ。かつてはLRTや新交通システム(ゆりかもめ延伸)などが検討されたこともあり、東京BRTは普通の路線バスとは一線を画した特別な交通手段として、この地で導入された。すでに連接バスやPTPS(公共車両優先システム)を導入し、将来的にバス専用レーンの整備や専用改札の設置を目指しているという。
なお、東京BRTは東京都の委託を受け、京成バスの子会社「東京BRT株式会社」ならびに京成バスによって運行されている。それぞれの役割分担としては、停留所の整備や施設は東京都(都市整備局)、運行そのものや、運行にかかわる車両や運転手は東京BRT株式会社、京成バスが担っている。
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